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トリアス久山物語『夢の始終』(12)~アメリカ流通事情
経済小説
2011年8月22日 11:51

<アメリカ流通事情>

 そこまで言われ、本藤は平山と同行し、2回にわたりアメリカの流通業を視察することにした。

 1995年頃、成田経由でコストコ本社のあるアメリカ北西部のシアトルに乗り込んだ。
 平山の言うとおり、アメリカでは大規模なショッピングセンターがあちこちにあった。それらは、すべて郊外の主要道路沿いにあった。
 本藤と平山は、ホテルで旅装を解くと、早速あるショッピングセンターを覗いてみることにした。平山は現地に案内人を手配していた。ダイエーのシアトル事務所の知人に頼んであったようだ。
 そこは郊外で、主要道路に沿って、約1キロに渡り、そのショッピングセンターの敷地が続いていた。

本藤は、アメリカから久山に戻り考えてみた... 駐車場は約3,000台。我が国のダイエーやヨーカ堂とよく似た雰囲気だが平屋の大型小売店が敷地の両端にあり、その間をモールといわれる商店街風の専門店街が続いていた。生活に必要な銀行や保険会社も揃っていた。レストランも我が国のすかいらーくやロイヤルホストのような店からファストフードまで揃っていた。なかでも目を引いたのは、広場に自由に使えるテーブルが何百席もあり、それを囲むようにファストフードの窓口が並んでいるフードコートである。そのメニューは、普通のハンバーガーやホットドッグだけでなく、メキシコ料理風のものや中華、それに寿司まであった。

 ただ、規模の大きさには驚かされたが、それ以上に気がついたのは、いずれの店も一般庶民を対象としていることだった。
 大型店のひとつは、デパートであるということであったが、その商品を手にとって見ると、ダイエーやヨーカ堂の商品とほぼ同様の価格であった。そしてわが国の百貨店には付き物のルイヴィトンやエルメスといったブランドはなかった。もう少し安いブランドは、専門店街にいくらか入っていたが。
 その日は土曜日ということもあって、お客は多かった。お客を見ても、客層は大衆であるとわかった。

 しかし、それ以上に本藤が驚かされたのは、これだけのショッピングセンター(リージョナル型といって、ショッピングセンターとしてはやや大型ということであったが)でも、対象とする商圏はクルマで30分圏内であって、1時間も行けば同じようなリージョナルショッピングセンターがほかにある、ということであった。全米では数万のショッピングセンターがあり、そのうちの約2,000カ所がこのような大規模型であるという。

 本藤は、アメリカから久山に戻り考えてみた。

 たしかに、アメリカではひとりに1台のマイカーがあり、クルマなしの生活など考えられない。本藤自身は運転免許証を持たず、何かあればタクシーか、妻の運転で出歩いていたが、よくよく考えてみれば、今はどの家にもクルマがある。それに若い人は高校卒業が近づくと必ずクルマの免許を取りにいっている。そして、だいたい社会人になるのと同時に軽自動車を買い、それを通勤の足にしている。

 もしかしたら、我が国もアメリカと同じような経過をたどっていくのかな、と考えた。

(つづく)

【石川 健一】

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<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)

東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


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