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トリアス久山物語『夢の始終』(14)~ショッピングセンターとチェーンストア(後)
経済小説
2011年8月24日 07:00

 それでは、チェーンストアの歴史についてはどうか。

 アメリカで、シアーズが広い国土のどこにいても通信販売で日用品を購入できる通販企業として成立したのは、実に19世紀のことである。
 それまでは、高い価格で町の個人商店か行商人から買っていた商品が、分厚いカタログを見て、手紙で注文して買えるようになった。このようなシステムを、コンピュータも自動車もない時代に成立させていたことは驚異的である。

ウォルマートに追い抜かれるまで... 同じ時期に、多店舗経営も登場し、The Great American社の「エコノミーストア」 は20年に4,621店舗を構えた。現在にもつながるウールワースは同じとき1,110店舗を構えた。
 20年代にT型フォードが量産され、モータリゼーションが進行した。これにともない、シアーズも、店舗販売をスタート、T型フォードの普及率が10%を超えるとともに多店舗化を開始、30年には338店を出した。やがてシアーズは80年代には全米一の流通業となり、ウォルマートに追い抜かれるまで、その座を維持した。

 シアーズの店舗は、もともとが通販業であるだけに、食品以外の衣料品・日用品全般を取り扱う店として立ち上がり、スタイルを確立していった。冷蔵輸送のない時代に、食品の物流が成立することは困難であったからだ。
 この業態はのちにGMS(ジェネラルマーチャンダイジングストア)と呼ばれた。百貨店よりもプライスラインが低く、一般大衆を対象とした品ぞろえの店舗であった。シアーズは、このスタイルを標準としてアメリカ全土に展開し、1920年代の終わりまでに、本部で一括商談した商品を送り込むチェーンストア経営が成立した。

 立地的も変化していった。
 モータリゼーションとともに小売店の立地も都心部から郊外の主要道路沿いへとシフトした。
 そして、単に道路沿いに単独で出店するのではなく、核となるシアーズなどの大型店に付随して各種専門店が多数出店するショッピングセンターが中心となっていった。そのほうが、共用駐車場を使えるといった便利さの面でも、ワンストップでも食料品からガソリンまでさまざまなものがそろう品揃えの面でもシナジー効果を狙えたからである。

 チェーンストアの運営の特徴は、3Sという言葉に集約される。
 3Sとは、標準化(standardization)、単純化(simplifiction)、特化(specialization)の三語の頭文字である。マニュアルに基づいた作業と情報システムを活用して、商品仕入等の本社機能は徹底して本社に集中し、店舗では最小限の作業のみを行うことによって最小コストで利益を上げていこう、というものである。
 この考え方があるがゆえに、チェーンストア経営では、商品と業態が市場にマッチしさえすれば、極めて簡単に、短期間に急激な多店舗展開を実行することができる。アメリカ流通業のトップも80年代までのシアーズから、現在ではウェルマートに取って代わられたが、このウォルマートのアメリカ国内の店舗数はなんと3,000以上、グループ売上高では、世界一の企業である。

(つづく)

【石川 健一】

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<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)

東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


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