NET-IB NEWSネットアイビーニュース

サイト内検索


カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ

会社情報

経済小説

トリアス久山物語『夢の始終』(17)~和製コストコを目指した男
経済小説
2011年8月29日 07:00

<和製コストコを目指した男>

 そういえば、コストコのようなウェアハウスクラブを出店したいと熱望する男が我が国にもいた。それは我が国の流通革命の先陣を切ったダイエーの中内である。

 中内は、我が国の物価をチェーンストア経営理論により2分の1とすることを目指していた。だから、商品を当時のGMSや、欧米のハイパーマーケットを模倣したハイパー店舗よりさらに低価格で販売できるウェアハウスクラブ、というスタイルはどうしても実現したいものであった。それもどうしても一番に、という我欲であった。

ダイエー このため、ダイエーは1992年に神戸市のハーバーランドに「Kou'sホールセールメンバーシップクラブ」を開店した。94年からは多店化に乗り出しまもなく7店舗を運営するようになった。中内は自分の名前(の音読み)を、このスタイルの店舗の名としてつけるほどの力みようだったが、しかし、少し時代より早すぎたからか、立地選定の詰めの甘さからか、業績は散々なものであった。その後もダイエーは、創業経営者の名を冠した業態からの撤退に踏み切ることができず、中内が身を引いた後の2002年にようやく全Kou'sの閉店が完了した。

 1999年、久山にオープンしたコストコも当初は振るわなかった。
 しかし、開店から10年を経てようやく人気が定着した。当初想定していたような、個人飲食店などの業務用の需要だけでなく、主婦のグループで大ロットの商品をまとめ買いし、それを分け合うといようなライフスタイルもマスコミで紹介され、利用客が増えたのだ。
久山のコストコは、後の2009年に契約更新の時期を迎えたが、そのようなこともあり、無事に更新し現在に至っている。
 とくに、コストコは、なぜこのような店で買い物を、と思うような倉庫形の店舗だったが、値札を見ると何でも日本の何分の一かという安さだった。これはいけると本藤も確信した。

 このようなことから、平山と本藤は、これを久山に誘致しよう、と誓い合うに至った。

 町長を引退し、財団理事長になっていた小早川の了承も得て、運営会社の株式会社トリアスを設立し、平山はコストコその他テナント誘致とショッピングセンター運営の準備を、本藤は地権者の取りまとめから開発許認可の取得を進めることとなった。
 平山は、この事業の責任者として開発会社の代表取締役に就任することが予定された。
 一方、本藤とは、将来設立される開発会社から、開発許認可までの業務を委託し成功報酬2億円を支払うという約束がなされた。そしてコストコを含めた国際流通施設を「バリューセンター」と名付けて進めることも決められた。

(つづく)

【石川 健一】

≪ (16) | (18) ≫

<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)

東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


※記事へのご意見はこちら

関連記事

powered by weblio


経済小説一覧
NET-IB NEWS メールマガジン 登録・解除
純広告用レクタングル

2012年流通特集号
純広告VT
純広告VT
純広告VT

IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル