中国山東省青島市郊外のホテルで、日々変わり行く中国を観察している現地滞在のフリーライターがいる。福岡と青島を定期的に行き来している彼に、リアルな中国の今をレポートしてもらった。
8月12日、中国最高人民法院は、婚姻法の新たな解釈を示す文書を発表した。この新解釈では夫婦の財産権の帰属、離婚の効力などの問題について明確に規定している。たとえば、「男性が結婚前に購入した住宅は、たとえ結婚後、住宅ローンが残っていて、そのローンを夫婦共稼ぎで支払っていたとしても、離婚後もその男性に所有権がある」との規定を明確に示したのである。この規定は「財産の帰属を財産権利書に示す名義人のとおり」としたもので、離婚における財産分与とは別次元の問題なのだが、「結婚すれば全て一心同体」とする古い慣習が残る中国では「女性にとって不利な法律だ」と物議を醸しているという。
もともと「一人っ子政策」の影響で、男性が女性より2割以上も多い中国では、したたかな女性が結婚相手を選ぶとき「家持ち、車持ち、高学歴、高収入」を条件としていたのだが、「財産を私の名義にしてくれる人」という条件も加わってきそうだ。
また、親が子供に住宅を買い与える場合も、その一方に所有権があるとの解釈を示した。以前は、夫婦どちら側の親が買ってくれた住宅であっても夫婦の共有財産と考えられてきたが、この新しい解釈により、それぞれの子供の単独財産としての規定を明確にしたのである。この規定に関しても「夫婦間の力関係を増長させる」として賛否両論、わが子の幸せのために、いち早く花嫁の親が結婚前に住宅を買い与える例が増えるだろうと予想されている。
一方、この新解釈の中には「子供を産むかどうかの決定権は女性が持ち、夫の同意を要しない」との解釈を示したものも明記され、女性を「子供を産むための道具」とみなす差別的な考えから守るという見地から、高い評価を受けているようだ。
80後、90後世代が結婚適齢期を迎え、「一人っ子政策」の歪みが顕在化している中国にあっては、近代国家を模索する人権を基礎とした法改正が、人々のために適正に運用され、浸透していくことを願ってやまない。
【杉本 尚丈】
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