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「壊れ窓理論」を実践する市内バス!~中国の素顔(36)
チャイナビジネス最前線
2011年8月30日 11:15

 中国山東省青島市郊外のホテルで、日々変わり行く中国を観察している現地滞在のフリーライターがいる。福岡と青島を定期的に行き来している彼に、リアルな中国の今をレポートしてもらった。

 このほど、中国財政部と商務部は2011年の車両買い替え補助金制度の条件と基準を公布した。今回の補助金の対象は都市部公共交通機関、農村部旅客輸送機関、大型トラックであり、乗り合いバスなどの買い替えが期待されている。

青島に導入された電動の市内バス北京の古い満員バス

 中国の乗り合いバスやタクシーなどの交通機関といえば「くさい」、「きたない」、「乱暴な運転」で有名なのだが、北京オリンピックの前にタクシーは随分きれいになった。まだまだ、乗車ルールなどは徹底されていないのでバスがきれいになったところで、何も意味がないと思われがちだが、青島で電動バスが導入されてからは利用客の「おちつき」という点では効果テキメンだ。

 犯罪心理学に「壊れ窓理論」(Broken Windows Theory)という犯罪抑止の理論がある。
「建物のが壊れているのを放置すると、誰も注意を払っていないという象徴になり、やがて他の窓もまもなくすべて壊される」との考え方からこの理論が構成されているのだが、まさに以前の乗り合いバスはそういう状態だった。列を守らず、バスが来れば我先に乗ろうとする乗客、混雑したときなどは慣れていないと目的地でなかなか降りられない。運転手も急発進、急停車を平気でするし、走っている途中でしばしばバスが故障することもあった。こうしたことが日常あたりまえのように行なわれていたのだ。このような状況のなかでは、いくら政府が「ルールを守れ」と声高に叫んだところで「壊れ窓」状態なのである。

自動ドアに首がはさまれた出発するバス平気で車道を横切る人々

 乗り合いバスが新車になって、運転手の急停車、急発進が少なくなり、それと平行して乗客の乗車マナーも以前と比較して格段に良くなったようだ。マナー違反は犯罪ではないにしても、まさに「街がキレイになれば、犯罪は減少する」という「壊れ窓理論」そのものの実効性を示すかのような現象なのだ。

 中国の地方都市であっても都市部では、経済の成長とともに人々の所得は向上し、インフラ整備とともに街がキレイなっている。そこに余裕と秩序が生まれ、次第に外国人でも住みやすい街へと変貌しているのだ。いまだに車道を横切る歩行者は絶えないが、車のクラクションの数は以前より少なくなった気がする。

(つづく)

【杉本 尚丈】

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