大分の経営危機は深刻だ。成績ではかつて九州をけん引した。2003年度から09年度までJ1に止まり、08年度にはカップ戦優勝を果たしたこともある。しかし、リーグ戦では時に厳しい残留争いを余儀なくされ、外国人を含めた監督交代や緊急補強を幾度となく繰り返した。その結果、降格した09年度には19億円を超える営業収入があったにも関わらず3億2,400万円の経常赤字、当期純損失6億1,600万円。10年度の黒字では到底およばぬ累損額を抱えている。成績も振るわず、降格初年度で15位に沈んだ。
東京Vは辛くもクラブ消滅の危機を乗り切った。現在の横浜FMとともに発足時よりリーグをけん引。三浦知良らスター選手を次々と輩出した。わずか2期前、J1に在籍した08年度には浦和を凌ぐ26億2,200万円の選手、チームスタッフの人件費を確保していた。ところが、09年9月に親会社日本テレビ放送網(株)がクラブ経営から撤退した途端に運営資金に困窮。短期間ながらJリーグが直接経営に乗り出す事態となった。その後、新たな出資者を得て今期の存続にこぎ着けた。昨季のチーム人件費3億4,700万円は、J2としては9番目だが、08年度の7分の1以下に削減されている。
横浜フリューゲルスは存続できなかった。1999年の天皇杯を制したにもかかわらず、親会社の資金難からライバルの横浜マリノスに吸収合併された。サポーターは新チームを発足させ、紆余曲折を経て現在横浜FCとしてJ2を戦っている。
資金がなければ最悪の場合クラブは消滅するという現実を知らしめた事例だ。現況潤沢な資金を有しているのはほとんどが親会社支援を受けているクラブ。ところが、現在の経済環境ではどんなビッグクラブでもいつ何時親会社が撤退するかわからない状況にある。
これまで触れたとおり、福岡の財務基盤は脆弱だ。13年度よりリーグ参加資格が審査されるクラブライセンス制度が始まる。財務体質の悪いクラブのJ2降格処分の可能性が指摘されている。一度減資に応じて貰った福岡が取る現実路線は「クラブ存続」路線でもある。
残留にこだわり、身の丈を超えた補強に走れば、即座に消滅の危機に直面する。
リュングベリの清水への移籍決定は、久々の大物としてリーグ全体の活性化の期待が持たれる。清水の純資産額は4億8,500万円。同比率は50.4%。年間営業収入は34億8,600万円で、チーム・選手・スタッフの人件費は14億9,800万円。これを今後の補強へ向けたクラブ体力の目安にしたい。
【鹿島 譲二】
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