県知事が「県民幸福度日本一」を目指している福岡県。しかし実態は、幸福度を低下させる数々の「悪い日本一」に頭を悩ませている。そのひとつが、飲酒運転による事故の件数だ。福岡県は昨年(2010年)337件でワースト。今年(11年)も7月までに166件が発生し、174件の大阪府に続いてワースト2となっている。
先日、馴染みの店で見慣れない黄色い貼り紙が目に入った。警察からの飲酒運転に関する『注意』である。事情を聞くと、常連客のひとりが、その店で飲んだ後に車を運転し、人身事故を起こしてしまったというのだ。
近年、飲酒運転に対する罰則は厳しくなっており、車を運転する可能性がある人に酒を提供した場合にも処罰の対象となる。たとえば、運転者が酒酔い運転の場合では、3年以下の懲役または50万円以下の罰金。運転者が酒気帯び運転の場合なら、2年以下の懲役または30万円以下の罰金となるのだ。
「酒酔い」とは、アルコールの影響で正常な運転ができない状態のことで、「酒気帯び」とは、体内アルコール濃度が、呼気1リットルあたり0.15ミリグラム以上、血液1ミリリットルあたり0.3ミリグラム以上の状態をいう。
飲酒事故を起こしたのは、小生もよく知っている常連であった。その客には誠実な印象を抱いていただけに最初は意外に思ったが、酒が入り、気が大きくなったことで「少しぐらいはいいだろう」「自分は大丈夫」といった油断が起きてしまったのだろう。そして、それは誰にでもあてはまることではないだろうか。
「他人のふり見て...」という言葉がある。飲酒運転による悲惨な事故が後を絶たないのも、そうした事故を他人事のように思っているからだろう。飲酒事故を起こしたのは、何も生まれついての極悪人ばかりではないことは、警察が配布している飲酒運転を犯した人たちの反省文を読めばよくわかる。
一方で、今後さらに飲酒運転への取締りが厳しくなっていけば、運転者にアルコールを提供した飲食店などへの罰則も一段と強化されるだろう。ある店のママは「客から飲酒運転が出たことで営業停止とかなるかもしれんね。そうなったら、入口で車のカギを取り上げるようなこともせんといかん」という。「知らぬ存ぜぬ」で済まぬとなれば、頼まれたら嫌とは言えない客商売、"覆面ドライバー"におびえる中洲経営者の姿が浮かんでくる。
長丘 萬月 (ながおか まんげつ)
1977年、福岡県生まれ。雑誌編集業を経て、2009年フリーライターへ転身。体を張った現場取材を通して、男の遊び文化を研究している。
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