中国山東省青島市郊外のホテルで、日々変わり行く中国を観察している現地滞在のフリーライターがいる。福岡と青島を定期的に行き来している彼に、リアルな中国の今をレポートしてもらった。
お盆直前の12日、人気グループ「AKB48」の記事がインターネットの2チャンネルサイトやインターネットニュースサイトをにぎわせた。「AKB48メンバーの無修正写真が中国のサイトから出回った」というものだ。
無修正写真といっても雑誌に掲載するために撮影されたAKBメンバーの写真が、フォトショップなどの写真加工ソフトで加工される前の状態でアップロードされたもの。その写真のなかには1画像5MBにおよぶ大型画像も含まれていたため、ホクロ、ワキのそり跡、はみ出した毛など、雑誌掲載時には修正される部分が、はっきりと見てとれるものまで掲載されていたのだ。この話題はインターネット上をまたたく間に駆け巡り、8月14日朝にはスポーツ紙の1面トップをかざることとなった。
さて、この発信元とされた中国のサイト、日本の記事では「違法ダウンロードサイトだ」、「ハッキングによるものだ」と悪の権化のように揶揄されたのだが、サイト自体は台湾、香港、中国で広域に活動する大手出版グループが運営する比較的マトモな掲示板サイトである。このサイトの画像掲示板には中国語、英語、日本語のページが準備されている。各ページの画像はキチンとサムネール化されており、子供の成長記録、旅先の風景、ペットの写真、自己紹介など、アジアの多くの人たちが自分のブログの延長線上にあるポータルサイトのように、画像をアップロードして利用している。画像を掲載する人のなかにはプロの写真家もおり、ダウンロードできる画像を本人が制限することもできるようになっているのだ。
今回のこの騒動について、中国で日本語の通訳をしている日本通の中国人に意見を聞いてみた。すると彼は、「仕事柄、このサイトはよく利用しており、AKBのことも知っている。日本のタレントやグラビアアイドルがたくさん掲載されていたこのページに日本からのアクセスが集中し、今回の騒動で閉鎖になってしまったことがとても残念だ」という。
さらに、「そもそも日本人は大騒ぎしすぎる。画像や映像が流出するとすぐ中国のサイトを悪者にする。今回の件は、自分たちの管理の問題だろ?ましてや、有名タレントなら水着撮影の前にムダ毛の処理ぐらいしておくのが当たり前じゃないか」と、手厳しい。日本人を相手に仕事をしている彼にとっては「日本のアイドルを知る大事な情報源」だったのだろうか、ページの閉鎖がよほど悔しかったようだ。
インターネット上のブログや掲示板が広く普及した今日、一度流出した情報は瞬く間に世界中に広がっていく。たしかに、中国をはじめとした海外サイトには合法、非合法を問わず、大量に情報を送受信できるサイトが多いのも事実だが、日本の情報は日本人がアップロードし、またダウンロードして利用するのもほとんどが日本人なのだ。自分が利用している借り宿を非合法だと決めつける前に、自身の情報管理を徹底しておくべきではないだろうか。
【杉本 尚丈】
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