<東急ハンズ、くうてんに死角なし>
では、JR博多シティにアキレス腱はないのだろうか。開業景気に乗せられたお登り来客は、次第に減少していくはずである。しかし、東急ハンズ、くうてんは、秋以降も順調に推移していくと思われる。
なぜなら、東急ハンズは商品の専門性と感度の高さ、品揃えの奥行きの深さ、そして店頭での打ち出し方や演出など、福岡の既存店にはない優れたノウハウを有するからだ。
また、代名詞であったDIY系の商品やサービスこそ縮小されたが、イベントスペースでの体験学習など、お客を引きつける仕掛けも豊富。何と言っても売場で商品を見て、触れて、比較して、購入できるのは、インターネットでは味わえないリアルショッピングの楽しさである。
くうてんは慢性的に飲食業態が不足していた博多駅周辺エリアにとって、完全にキラーコンテンツとなったようだ。
新幹線開通で時間に余裕ができた旅行客が食事をじっくり楽しめるのは旅の醍醐味だし、地元客にとっても名店からグルメ志向の店、和洋中の味までが一カ所に揃うのはここしかない。
団塊世代を中心に旅行需要は衰えそうもなく、「旅立つ前に食すか、旅の味を懐かしむか」などJRとの共同販促など、仕掛けはいくらでもできる。これに原発事故の影響で去った外国人旅行客が戻ってくれば、くうてんの市場規模はさらに広がると言えそうだ。
<カニバリゼーションは必至>
アキレス腱は流行や購買心理の変化で浮き沈みが大きいファッション業態になる。
HAKATA SISTERSのラグナムーン、ドロシーズ、デビー バイ フリーズショップは福岡初上陸ということで、この半年はリアルショッピングを楽しむお客を集めた。
しかし、これら旬のブランドはネット通販にも対応しており、県外客を持続的に集客できるかについては懐疑的だ。
また、アミュプラザでも九州初の「フレームワーク」、一律に人気が高いアクセサリー業態は好調のようだが、大半のテナントは他にも店舗を抱え、決して珍しくない。
さらにビル内の店舗やブランドは名前こそ異なるものの、多くのテナントでそのテイストが重なる。特にセレクトショップと言われる業態で、その傾向は顕著だ。
つまり、カニバリゼーション(自店での食い合い)は避けられないわけで、この半年こそ開業の勢いで各店舗のモチベーションは高かったが、秋以降は店長のスキルや販売スタッフの接客の差が出て、売上げが伸び悩むところが出てくるかもしれない。
デベロッパーの博多ターミナルビルは、不調テナントは入れ替えると公言しているし、テナント側も売上げが厳しければ退店やリロケートもあり得るはずだ。2年目以降にこうした事態が顕在化したとき、JR博多シティの屋台骨が揺らぐとも限らない。
【釼 英雄】
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