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チャイナビジネス最前線

賢人たちが語る「中国の今」(1)~長崎大学・宮川准教授
チャイナビジネス最前線
2011年8月 1日 15:23

 今回は、7月19日に九州経済産業局の主催で開催された「中国環境ビジネスセミナー」の模様をレポートする。講演者は長崎大学工学研究科 准教授 宮川英樹氏。セミナーには、中国の環境分野に関心のあるビジネスパーソンなど約100人が参加した。

「中国環境ビジネスセミナー」中国環境ビジネスについて講演する 長崎大学工学研究科 准教授 宮川英樹氏

<拡大する環境ビジネス>

 日本の環境ビジネスの市場規模は、経済産業省の推計値で15年には83兆円になるだろうと予測されている。
環境ビジネスを分野別に見てみると、
(1)再生可能エネルギー、省エネルギーなどの「温暖化関連」
(2)廃棄物処理、リサイクル装置などの「3R関連」
(3)公害防止施設、環境修復などの「自然共生・公害関連」
という3つの分野に分けられるが、日本においては、特に(1)の「温暖化関連」市場が注目されている。この「温暖化関連」市場は2015年には約50兆円の市場規模を達し、その後も「環境未来都市モデル」形成に向けて日本の環境技術発展とともに市場規模はさらに拡大していくだろう。

<中国が求める日本の環境技術>

 日本は、環境技術や省エネ技術を開発・蓄積してきた。この日本の最先端環境技術を世界的に活かすことで、地球環境問題の解決に貢献しようという試みが始まっている。
 しかしながら、相手国のニーズと日本のシーズがかみ合わず、思うように進んでいないのが現状だ。そこで、今回は中国を事例に、相手国が求めるニーズを紹介する。
 中国の廃棄物量は13億6,500万トン、日本の4億6,600万トンの約3倍であるが、最終処分率をみると日本が4%であるのに対し、中国の場合、最終処分率44%と日本の10倍以上となっている。インドネシアの最終処分率88%と比較すればいい方だが、中国では、工業化と消費市場の急拡大に伴い環境問題が深刻化している。環境中進国の中国が「今」求めている環境技術は「3R関連」の技術なのだ。特に、表流水の汚染対策や家電リサイクルが始まったばかりの中国では、
(1)上下水道・産業用の水処理技術やクリーン焼却技術などの「環境汚染防止技術」
(2)家電、自動車のリサイクル技術や廃棄物・化学物質の管理技術などの「リサイクル技術」
が求められている。

<事例に学ぶ市場参入の成功要因>

 こうした中国の「今」のニーズに対し、欧米企業の参入事例を紹介しよう。欧米企業は、中国企業とのJV形式で着実に市場参入を果たし、成長を取り込むアクションに出ている。アメリカ産業廃棄物大手のウェイスト・マネジメントは、上海のゴミ処理大手、上海環境集団の株式40%を取得することで上海ゴミ処理事業に進出を果たした。また、水処理の分野では、フランスのヴェオリア・ウォーターが天津の国営企業と合弁契約を結び、中国での水事業プロジェクトを22件に拡大した。日本からも多くの企業が参入しているが、まだまだ中国が求めるニーズに達していないのが現状だ。

 特に、日本の中小企業が中国の環境ビジネス市場に参入しようとする場合は、経済産業省やジェトロなどの支援機関を十分に活用し、「事前の市場情報把握」と「有望な現地パートナー」を求めていくことが最も重要な成功要因となっているようだ。

 環境分野において、30年には120兆円に達する市場規模が見込まれている中国。経済成長に伴い深刻化する中国の環境問題の改善へ向けて、すぐれた環境技術を有した日本の中小企業が、数多く参入し、アジア全体の環境改善に貢献してほしいと願っている。

(つづく)

【杉本 尚丈】


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