岡山理科大工学部(岡山市)の山本俊政准教授(水産増殖学)の研究チームが、高級魚のトラフグを、海水魚と淡水魚の両方が成育できるという特殊な"淡水"の「好適環境水」で養殖することに成功した。
研究チームは昨年(2010年)4月、加計学園生命動物教育センター(岡山市北区)で、熊本県産の天然トラフグを人工授精。卵約1,000個を孵(ふ)化させて、同6月ごろに好適環境水の水槽(35トン)で養殖。 トラフグは、病気にかかりやすく養殖が難しいが、今年(11年)6月ごろには約900匹が体長約35センチ、体重1キロ以上に成長。
この「好適環境水」で育った「岡山理大トラフグ」52匹が、7月28日、岡山市中央卸売市場に初出荷された。ご祝儀相場との見方もあるが、冬が旬の天然物とほぼ同額の1キロ約4,000円の高値ですべて競り落とされた。
「好適環境水」は、海水を使わず淡水に少量のカリウムなどわずかな電解質を加えて、浸透圧を調整した特殊な淡水。養殖のトラフグで問題となったホルマリンなどの薬品を一切使っていないという。成育期間も1年2カ月で、従来の約2年から大幅に短縮された。
好適環境水で養殖されたトラフグは、肌がほんのり金色を帯びており、 味は濃厚で甘みがあって臭みはないのが特徴。天然物は冬場が旬だが、 養殖に成功したトラフグは年中、旬の味わいが楽しめるという。
「岡山理大トラフグ」の誕生は、「海」ではなく「淡水の川」で養殖できる新技術として注目を集めており、庶民にとって高級魚の「河豚」が1年を通して、豚のように安く食卓に登場する日は意外と早いかもしれない。
【北山 譲】
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