アビスパ福岡の監督交代について、「時期が遅い」「監督だけの問題ではない」「編成の問題」という批判があった。伏線に開幕前の補強状況がある。昨年(2010年)大活躍した永里選手らが移籍した一方で、獲得は日本人の限定された人数に止まった。
アビスパ福岡の09年1月期の経常収支は6,050万円の赤字。10年1月期1億886万円の赤字で自己資本額は5,426万円。11年1月期に過去2期までと同じ状況なら債務超過転落の危機だった。福岡市や『七社会』以外から初となる大塚唯史代表ら新経営陣はそうした最中(2010年3月)に就任した。11年1月期は減収となったが3.410万円の経常黒字回復となった。J1復帰はそうした過程で実現した。
永里選手を止めきれず永井選手を獲得できなかった要因は明らかになっていないが、状況などを鑑みれば年俸は無関係ではあるまい。すなわち、経営陣が責められるとすれば冒頭の指摘よりもスポンサーなど営業面を含めてそうした資金を獲得できなかったことになるだろう。
ところが、新スポンサーふくやと西日本新聞社のロゴ入りのユニフォームを7月24日に初めて着用した。ハマゾッチ選手の加入が決定したのが7月27日。そして今回の浅野新監督が就任したのが8月3日である。経営陣はシーズン前に間に合わなかったが営業面で結果を出した。現在の状況を考えれば来年(12年)J2で力を蓄え、昇格後には陥落しないチーム作りの資金に充てる考え方もあった。しかし、すぐに資金は現場に投下された。ロマンとソロバンの難しさが浮き彫りとなっている。
財務状況を積極的に発信することで、サポーターの獲得にもつながる。即座に「博多の森」に足を運ぶかは不透明だが理不尽な批判がなくなることは間違いない。
J1復帰に際して浅野新監督の人柄や力量が大きく寄与したことは関係者から指摘されていた。交代への批判を超える期待が集まっている。
【鹿島 譲二】
*記事へのご意見はこちら