9日、佐賀県議会の原子力安全対策等特別委員会で、古川康 佐賀県知事は、玄海原発に関する説明番組における「やらせ」や自民党県議に支持者を通じた働きかけを要請したとされる九電側のメモ『段上副社長・諸岡常務退任挨拶メモ』(記事下画像参照、以下「九電メモ」)に対して、内容がまったく違うなどの説明を行なった。さらに、メモの根拠とされる6月21日の会談において、古川知事が「メモをとられていた意識はなかった」としていることから、県議会側からは、メモを流出させた九電に対して、より強い抗議をすべきとの提言もなされた。
6月21日朝、その当時、九州電力の副社長であった段上氏と、同じく常務であった諸岡氏が退任のあいさつに知事公舎を訪れた。この時に同行した大坪佐賀支店長(当時)が、九電メモを作成したとされている。古川知事によると、当初は、県庁での会談を予定していたが、九電の三人が早く到着したため、公舎で会談したという。
九電メモについて古川知事は、「項目としてはあっている」とした上で、内容・ニュアンスが違うことを強調。具体的な相違点については、議事録ができ次第、速やかに提出するとしている。九電で「やらせメール」問題が起きたことについては、「そのつもり(要請)はなかった」と釈明した。九電メモについて古川知事は、8月6日に九電からFAXで受け取り、初めて見たとしており、6月21日の会談については「当初、覚えていなかった」との答えも出ていた。
古川知事の言い分が本当とするならば、九電は、根拠があやふやな上に、事実がねつ造されたメモを"佐賀県知事のお墨付き"としてダシに使い、「やらせ」をしたということになる。法的手段を用いた抗議を行なっても然るべきだろう。
古川知事は、政治家個人としては、九電関係者から個人献金を受け取らないなど、距離をおくように後援会に提案したこと、県政の責任者である知事としては、県議会の議論をふまえながら、今後のあり方を検討していくことなどを述べた。
一方、県議のなかには、百条委員会(※1)を立ちあげ、徹底的に調査・究明すべしとの意見もあった。現時点で佐賀県議会は、原子力安全対策等特別委員会で、知事と会談した九電側の段上氏、諸岡氏、大坪氏の3人を参考人招致し、真相を究明していく方針。招致は早くて8月22日の週になる見通しだ。
九電と距離をおく考えを示した古川知事だが、地元の有権者からは冷ややかな声も...。同委員会に一般傍聴で訪れていた60代の男性は、「佐賀県には、なんだかんだで九電の世話になっている事情があり、佐賀県政および古川知事が関係を絶つことはできない。しかし、持ちつ持たれつにも限度がある。県民がもっと関心をもって、県民のパワーで変えていかなければ変わらない」と、嘆いていた。
※1 地方議会が、地方公共団体の事務に関する調査を行なうために設置する特別委員会。地方自治法第100条に規定されていることから「百条委員会」と呼ばれる。
■『段上副社長・諸岡常務退任挨拶メモ』(九電メモ) ※クリックで拡大
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