民事再生法の適用を申請し、事実上の倒産状態となった(株)安愚楽牧場。同社を訪れてみたが、本社の入口は封鎖され、警備員がガードを固めていた。「これ以上は入れません。どのようなご用件ですか?」警備員に制止され、本社内には入れない。建物内には、社員らしき数人がせわしなく動いていた。
本社前には地元紙記者なども張込みを続けている。建物から出てくる社員に話かけてみるが、無言のまま車に乗り込んでしまった。本社牧場は、敷地内にホテルや加工食品の直売店などもあり、観光スポットになっているのだが、人は少ない。
黒毛和牛の牧場を覗いてみる。一目見ても、質のいい高級和牛であることがわかったが、満足に餌を与えられてないのか、心なしかやせ気味のような気がする。
あたりには牛の鳴き声が響いていたが、ゆったりとした「モォ~」ではなく、「モォ――ッ!」と吠えているような鳴き声で、怒っているようにも感じた。
同社の直売店「安愚楽本店」は臨時休業。直売店の奥にある事務所にも、メディアが張り込んでおり、ここもガードマンの警備が厳重で、なかには入れなかった。事務所の奥にある和式の豪邸は、同社社長の自宅。そこには近づくこともできなかった。
栃木県の小さな企業から、畜産業界の大手に成り上がった同社だが、創業者の後を継いだのは、創業者夫人の三ヶ尻久美子氏。経歴は不明だが、同社のプロモーションビデオを見ると、熱い語り口で「うしづくりは、人づくり」と語っている。ただ、地元関係者の間では、金銭面での執着心が強く、トラブルが絶えなかったとの噂もある。
【山本 剛資】
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