<"微生物と共生"して水質を浄化>
福岡県みやま市にあるコンクリート製造販売業者のコヨウ(株)は、2000年3月、いち早く水質を浄化する作用を持つブロックの開発に成功した。納豆菌群を生きたままセメントペーストに閉じ込めており、水中に入れると菌が多孔質内で多く繁殖して外へ飛び出し、有機物を吸着し、沈殿・分解を行なって水質を浄化させるという仕組みだ。
本製品について、九州大学総合理工学研究院の松永信博教授は報道番組の取材に対し、「エコバイオ・ブロックの効果は早いときで2、3日、通常およそ1週間で表れる。納豆菌には有機物分解や悪臭除去(アンモニア分解)をする働きがあるため、水質浄化に適している」と述べている。
アジア各国の河川浄化にも使用され、マレーシアを皮切りに、中国、インド、韓国などでも国家プロジェクトとして採用された。最近では大型工事用のものよりも、水槽など家庭用の小型のものに注力し、国内のホームセンターなどで販路を拡大している。
<地球愛が生んだ無限の可能性>
日に日に認知度も高まっているエコバイオ・ブロックだが、成功に至るまでの道のりは険しかった。コヨウ代表取締役の古賀雅之氏は、「ブロックが持つ特質を活かして環境浄化に使えるようなものをつくりたいと思ったことが、このエコバイオ・ブロックをつくるきっかけだった。それからさまざまな菌を入れて試験をしてきたが、10年くらいは成果が上がらなかった。ようやく完成したと思った矢先、次はマーケットをつくるのに苦労した」と、語る。
もともと京セラで稲盛和夫氏の薫陶を受けた古賀社長は、「モノづくり企業は新しいモノをつくり続けないと生き残れない」「モノづくりはゼロからではなく今あるものを発展させるべきだ」ということを叩きこまれた。そこで、先代・先々代から3代目を受けついだブロック事業と、これから関心が高まるであろうエコを結び付けることにしたのだという。
そんな苦労が実り、着実にマーケットが広がっていることを実感しているという古賀社長は、今度は中国に目を向け「現地で生産し、生産コストの削減や作業効率のアップを図り事業拡大を目指したい」という。中小企業にとって「このまま円高の世のなかになっていくと輸出が厳しくなるのは必然。早くTPPに加入してもらいたい。法人税も少し引き下げてもらわないと日本の中小企業は元気にならないだろう」と、日本政府への不満を募らせている。
しかし、古賀社長の夢はまだまだ終わらない。今後は海にも着目し、海藻類をブロックに根付かせ、水質浄化を図れる新たなバイオブロックを開発中という。「汚染された川や池、海に我々が開発したバイオブロックを幅広く利用してもらい、魚が住める環境をつくってほしい」と、胸を膨らませる。
[COMPANY INFORMATION]
コヨウ(株)
代表:古賀 雅之
所在地:福岡県みやま市瀬高町坂田169
設立:1960年4月
資本金:1,200万円
TEL:0944-63-3133
URL:http://koyoh.jp/
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