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福岡地所を復興させた男~八木聖二さんご苦労さん!!さようなら(4・終)
コダマの核心
2011年8月12日 14:43

<ひと肌脱ごうとした方々は皆、窮地に陥る>

 福岡地所復興に向けた大プロジェクトのひとつである"財務健全、借入圧縮"を不動産証券化で達成させたことは前回で触れた。もうひとつのプロジェクトは、不動産処分、グループ会社の売却・再編成である。グループ会社のひとつに住宅会社があった。これを外部の企業に転売した。八木氏はその面では律儀である。購入先にはその後、仕事を発注することで恩を返した。高級スーパー・ボンラパスをハローデイに売却した時点で、企業再編・再構築計画の大半を実行に漕ぎつけた。福岡地所を復興させる事業中核を不動産家主業とホテル業に絞り込んだのである。この事業の選択と集中策は八木氏の能力が如何なく発揮されたと評価される。

 不動産売却を巡って様々なドラマが起きる。興味深い言い方をすれば「福岡地所の不動産を購入すると不幸になる」と、囁かれた時期がある。誰もが「榎本・福岡地所の不動産を買って榎本氏に貸しを与えていれば、いずれプラスになって戻ってくるだろう」という魂胆をもって行動する。当時、ユニカの緒方社長の判断は正解であった。護国神社前(中央区赤坂)に福岡地所が住宅展示場を持っていた。その土地をユニカが取得し、大型マンションを建てて完売した。緒方社長と福岡地所は蜜月の仲になった。13年前のことである。

ユニカ香椎浜 時が変わり、福岡地所は、最大の含みである不動産(香椎浜)を売りにだした。この物件をユニカが獲得したのだが、こんどは禍となった。周知の通り、香椎浜の物件の商品化が立ち遅れたことからユニカは「アウト」になった。名門・高松組も自己破産申請した。この現場を受注していた九州建設も経営危機に落ち込んで福岡銀行から人材が派遣されている。香椎浜が転売されたことは福岡地所にとって「べリィグッド」(最大の幸福)になったのである。

 実例を紹介してもキリがないが、もう一例。福岡飛行場近くに福岡地所が住宅展示場を所有していた。2003年にソロンが購入している。ソロンオーナー・田原氏も事業計画に沿って手当てしたばかりでなく榎本氏との友好関係維持の計算もあったはずだ。その後、田原氏が体調を壊したこともあり、事業休業。不動産は西武ハウスに転売された。西部ハウスも苦労を積み重ねてようやく完全商品化への道に辿りついた。「福岡地所が肥えればどこかが細り果ては倒産に至る」。経済小説を近々、描いてみたいものだ。

<私心に一点の曇りもない>

八木聖二氏 福岡地所復興の事実を眺めて世間、一般は「一彦オーナーがスーパー経営者・八木氏を上手く使った」と評価する。筆者は「ただ一彦氏は運が良かっただけ。復興できた第一の原動力は八木氏の経営能力に尽きる」と、判定する。ただ世のなかは非情なものだ。能力だけで物事がスムーズに運べられるはずもない。周囲の嫉妬、画策で妨害を受けることはしばしある。それも身内から策動されるものだ。

 八木氏の『福岡地所復興』の理由(わけ)を取材してみた。同社の幹部たちは異口同音に証言する。「それは八木氏にまったく私心がなかったからだろう。会社を健全にさせる一点があの人の判断基準であったから反論の欠片すら生まれてこなかった」と。飲み食いからすべて自分の財布から払っていたエピソードの類などを数多く耳にした。どうであれ福岡から八木氏みたいな経営者が登場することがあり得ないことはたしかだ。八木さん!!ご苦労さんでした。サヨーナラ。

(了)

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