クレジットカードのショッピング枠の現金化業者による出資法違反事件で、初の逮捕者が出たとして各メディアで大きく取り上げられているが、その余波を気にかける声が各方面からあがっている。
そもそも、ショッピング枠の現金化には、(1)「商品買取り型」と(2)「キャッシュバック型」の2通りがある。「商品買取り型」は「換価型」とも呼ばれ、クレジットカードで換金性の高い商品を購入し、それを転売して現金に換える方法。手法自体は古典的で、購入する物によっては換価率が低いためギフトカードのような流通性の高い(=換価性も高い)商品が選ばれる傾向にある。ここでは、カード所有者 → 現金化業者 → 転売品購入業者の流れのなかでの換価率差が手数料(=利息)に該当する。
他方、(2)「キャッシュバック型」は、クレジットカードで商品を購入する点で共通するものの、その商品は実際には二束三文であるケースが多い。代わりに「現金キャッシュバック」という特典によって現金を得ることになり、キャッシュバック率が9割なら1割が手数料(利息)ということになる。ちなみに、今回逮捕された元貸金業者の男が営んでいたのは(2)「キャッシュバック型」であった。
注意すべきは、売買の形をとっているものの実質的には「金融」であり、手数料の数倍が実質的年間利息になること。たとえば、先の(2)キャッシュバック型のケースで2カ月先のカード決済であった場合、【実質年間利息】=10%÷2カ月×12カ月=60%。法律上の制限利息を大きく超える超高金利となる。また、(1)の業態が詐欺の手段として使われることもしばしばで、詐欺での逮捕は90年代から散見されていた。
それでも現金化業者が勢力を拡大してきた背景には貸金業法の改正がある。2006年に改正され、10年6月に施行された同法により正規の貸金業者が激減。融資基準の厳格化によって利用者も借入限度額を抑えられたことから、業者・利用者双方がショッピング枠現金化の分野に流れこんできた。今回の逮捕は、その避難先すらも規制対象とするものであり、今後の展開次第では、利用者はさらに大きな制約を受けることになる。
貸金業法の改正によって、多重債務者を含む困窮者が一層の窮状に追い込まれるであろうことは、改正当初から問題点として指摘されていた。今回の事件は現金化業者の逮捕という形でこれが表面化した事例といえる。悪徳業者を排除する一方で、行政主導での受け皿作りの必要性が改めて問われることになる。
【田口 芳州】
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