経営学を志す学生が現実の経営を知るとともに、実践的な経営を学ぶ機会を提供する目的で始まった「近大亭」。本町商店街に位置し、商店街の小売業に直接触れ、アクション・リサーチによる商店街研究を行なうための活動拠点となっている。その仕掛け人、近畿大学産業理工学部経営ビジネス学科教授の日高健氏に、飯塚市の地域活性化の現状と課題について話を聞いた。
<「近大亭」を始めた契機>
―日高さんは、どのような経緯でこの「近大亭」を始められたのですか。
日高 私はもともと水産経営の研究者です。漁村を中心とした活性化および養殖マグロの流通を2本柱に研究しておりました。4年前に奈良の近畿大学農学部から飯塚の産業理工学部に転籍しまして、そのとき陸に上がってしまったわけで、何をしようかと考えました。
もともと私は、漁村の活性化を研究していました。そこで課題と感じたのは、コミュニティがあり、古いタイプのビジネスがあり、周りの環境がどんどん変わっているなかで、そこにある昔ながらの地域はどう対応していくのかということでした。それとほとんど同じような課題を抱えているのが商店街で、たまたま近大のすぐ近くにあったということです。
飯塚市に来て、このような地域課題を考える端緒として、商店街のあり方を考え始めました。「なぜ漁村を研究していたのに商店街を?」と聞かれることもよくありますが、漁村の活性化、地域コミュニティ、地域産業という流れのなかに必然的に商店街がでてきたというわけです。
もう1つは、近大の学生が経営の勉強をしているわけですが、勉強が好きな学生が少ない(笑)。でも、いろいろな場面に出くわせば生き生きと動く可能性はあります。
この商店街をまわってみると、商店主の方々は生きたマーケティングを実践し、生きた知識を持っていることが分かりました。その人たちと触れ合うことで、学生たちが生きたマーケティングを身につけるかもしれない―そこで「近大亭」の活動を始めました。
最初は商店街全般の調査・研究だけでしたが、のちに個別の商店に入って経営調査・分析をし、提言していくようになりました。次に、その提言を実行するということになりますが、実行するかどうかは各商店主の意向次第で自由にならないわけです。そこで、「自分たちでもやってみよう」となりました。
最初は週に1~2回、物をつくって販売するというプログラムでしたが、それが昨年9月に"ふくれ"をつくって毎日売るというかたちになりました。週1~2回と毎日とではまったく違うビジネスになります。やはり、つくる、売る、それに対するコストを真剣に考えなければなりません。
【文・構成:大根田 康介】
<プロフィール>
日高 健(ひだか たけし)
1958年宮崎県延岡市生まれ。1985年福岡県庁入庁。1998年福岡県庁退職、近畿大学農学部専任講師。01年近畿大学農学部助教授。2003~2004年オーストラリア・クイーンズランド大学客員研究員。07年近畿大学産業理工学部経営ビジネス学科准教授、10年より現職。出身校、九州大学農学部水産学科、慶應義塾大学経済学部、神戸大学大学院現代経営学研究科(MBA)、博士(水産学)。
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