人件費の原資となるのが、一般企業の売上に相当する営業収入である。主に入場料、広告料、Jリーグ配分金からなる。昨季のアビスパ福岡はJ2で7番目の9億3,800万円を得た。人件費でも7番目。J2では人件費で突出していた柏(27億4,300万円)と千葉(23億600万円)が群を抜いている。J1トップは人件費も最多だった浦和。実に56億円の営業収入を上げている。入場料収入の22億4,900万円は福岡の全営業収入9億3,800万円の2倍を遥かに超える。ホームスタジアム収容人員の差(福岡のレベルファイブスタジアム2万2,563人に対し埼玉スタジアム2002は6万3,700人)もあるが、サポーターの裾野の広さが伺われる。あらためて選手・スタッフへの投資には売上の確保が至上命令であるという事実を突きつけられている。
増減額で見ると多くのクラブが減収となっている。福岡は入場料収入を増加させたものの、広告収入の減少により減収となった。JFLから昇格した北九州を除くJ2の18クラブのなかで増収となったのは6クラブに止まった。3チームは条件が良いJ1からの降格のため当然と言えるが、それを除いても半数以上が減収となっている。
J1はさらに顕著だ。昇格した3チームを除けば鹿島と横浜F・マリノス、そして山形の3クラブのみが増収。営業収入トップの浦和は実は8億円以上の減収を余儀なくされているのだ。浦和は08年には70億円を超える営業収入を上げていたが、2年間で14億6,600万円の減収と大幅に落ち込んでいるのだ。浦和の減収は、毎年優勝候補に挙がる実力を持ちながら08年以降成績が振るわないことが最大の要因。売上回復には順位浮上が必要条件となる。
しかし一方で、昨季優勝した名古屋、2位のG大阪も大きく営業収入を落としている。前述の通り昇格組以外での黒字は3クラブのみ。それらの増収額はいずれも5,000~6,000万円台の微増。各クラブの事業環境は厳しさを増している。
【鹿島 譲二】
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