今年(2011年)のプロ野球は、節電のための試合時間短縮で行なわれている。試合は9回以降同点の場合、延長は12回までできるが、試合時間は3時間30分を超えると引き分けとなる。要は午後6時に始まれば午後9時30分前後には終わることになる。今年限りの特例措置として4月4日にプロ野球実行委員会で決定された。
2001年から10年までの間実施されていたルールでは、延長は12回までで時間無制限であった。試合時間は4~5時間になることもあり、終電といった交通機関の都合や翌日の仕事への影響に対する懸念から、試合終了まで試合を観戦できず、途中で帰る人たちが多かった。最近は遅くとも午後10時には終了するため、試合を最後まで観戦する人たちが増えている。時間が短縮されたことで、ある意味、ファンは恩恵を受けているのかもしれない。
一方で選手は、必ずしも恩恵を受けるわけではない。ファンは、各球団の勝敗を争うペナントレースの行方もさることながら、お気に入りの選手のバットマンレースにも注目している。打撃ランキングに入るための規定打席数は試合数に3.1をかけた数字。プロ野球は一軍の試合数が年間144試合であるため、規定打席数は446打席となる。しかし、節電によって試合時間が短縮されることで、打撃が好調でもランキングに入れない選手が出てくる可能性が高まっているのだ。
現在、福岡ソフトバンクホークスには打撃が好調な二人の選手がいる。
今年横浜ベイスターズからFA移籍してきた内川聖一選手とベテランの松中信彦選手だ。ともに故障などによる欠場があったが、8月24日現在、規定打席未満ではあるが打率三割を超えている。従来ならば、乱打戦ともなれば打席数も増え、多いときで5~6打席回ってくるが、節電を配慮した特別措置と、低反発球の影響による投手戦の増加から、一試合4~5打席しか回ってこないケースが多い。つまり、規定打席数の超えられるかどうかに黄信号が点いているのだ。
「パ・リーグの隠れ首位打者」とも言われている内川選手は8月24日現在、71試合出場279打席で打率.342。福岡ソフトバンクは100試合を消化しているので、現時点の規定打席数は310打席。現時点で31打席不足していることになる。仮に残り44試合フル出場し、一試合に4打席以上立つことを仮定して176打席。現在までの279打席と合わせて455打席。ギリギリ規定打席数をクリアする。ただし、内川選手は、故障持ちであるだけに無理はさせられない状況だ。
そしてもう一人、ベテランの松中選手はオールスター前から調子を上げ、現在、打率.315。71試合出場で打席数は241。規定打席には69打席不足する。残り44試合にフル出場し、毎試合4打席立ったと仮定しても176打席で現在の241打席と合わせても416打席と規定打席には30打席不足してしまう。今年は、バッターにとっていろいろと不利なシーズンと言えるだろう。
【矢野 寛之】
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