広告料・入場料とも急速に増やすことが困難であることが判明した。資金力を上げるには長期展望で浸透させていくしかないのだろうか。カギは営業収入の「その他」項目にありそうだ。これにはグッズ販売や自動販売機の売上、そして移籍金などが含まれる。グッズや自動販売機の売上は人気や集客数と連動する。ここでは移籍金を見てみたい。ヨーロッパでは有力選手の移籍金は頻繁に数十億円規模になる。日本人選手では本田選手(CSKAモスクワ)の設定額は約18億円とされる。長友選手のチェゼーナからインテルに移った際の移籍金は報道によってまちまちだが、最大で約14億円という話もある。香川選手(ドルトムント)は26億円とも28億円とも言われる。ひとりのスターを生み出せばJ1中堅からトップクラスのクラブの人件費を賄うことも可能だ。
ただし、現状では、日本から海外への移籍金は低い。香川選手がC大阪から移籍した際は約4,000万円。評価が高かった長友選手でも約2億円。鳴り物入りでバイエルンに移った宇佐美選手も期限付きからのスタートだ。日本選手はヨーロッパで活躍した後に値段があがる。ヨーロッパ在籍選手にコンスタントに活躍してもらい少しでも交渉のスタートラインを上げていくしかない。このところ日本選手の評価が上昇傾向でヨーロッパへ移籍する選手が増加している。環境はよくなりつつある。
ユースから長い時間をかけて育成した日本人選手でなく獲得した外国人の移籍金で稼ぐ方法がある。08年に東京Vからポルトに移籍したブラジル人フッキ選手は、90億円のオファーを断ったとされる。有望な若手を発掘していきなりヨーロッパリーグでなく、Jリーグの選手の獲得に積極的な中東などに売るという方法もあるようだ。
海外ネットワークや選手を他チームでくすぶる選手を見極める目を持った編成担当者を抱えれば、短期間で売り上げを上げることもできそうである。
その他営業収入で突出する鹿島、F東京、清水には詳細な内訳を公開し、他クラブへの道しるべとなることを期待したい。
ただし、移籍によってチーム力が下がれば批判の対象となるし、ネットワーク形成や力量ある担当者の獲得にも相応の時間とコストがかかる。最終的には一般企業同様内部留保ということになりそうだ。
【鹿島 譲二】
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