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経産省の演出通りにあっけなく成立した「原子力損害賠償支援機構法」(前)
政治
2011年8月26日 07:00

 菅直人首相の求心力が著しく低下するなか、あわただしく成立したのが「原子力損害賠償支援機構法」だった。東京電力の福島第一原発事故にともなう損害賠償請求を、新設する「原子力損害賠償支援機構(以下、支援機構)」でまかなうという内容で、これによって東電の法的整理の可能性は消えた。国の責任を前面に打ち出すことで、本来責任ある者たちがまたしても逃げおおすことに成功したと言えるだろう。

霞が関 「根回しペーパー」と呼ばれるひとつづりの資料が、7月以降、与野党の政治家に広く出回っていた。政府提案の支援機構法案は、ねじれ国会のなかでスムーズに通過しそうにない。成立には与野党協議、とりわけ自民、公明両党の取り込みが欠かせない――。そこで、野党に花を持たせる法案修正のポイントと、"この点は譲れない"という修正してはいけないポイントをしたためた、与野党協議のための根回しペーパーがつくられたのである。

 これだけならば不思議ではない。政権党である民主党の国会対策委員会の幹部や、法案審議を所管する衆院経済産業委員会の民主党の理事らがそうした文面をつくって、野党各党に諮ることは十分にあり得るからだ。

 ところが、このA4版十数枚の根回しペーパーは実は与党の政治家たちではなく、本来は黒子であるはずの法案作成に関わった官僚たちがつくったものであることが明らかになった。法案をつくった内閣官房経済被害対応室に経済産業省から送り込まれた官僚が、パソコンで急ごしらえして与野党の政治家にばらまいたらしい。

 野党・みんなの党の江田憲司幹事長は、7月26日の記者会見で「政府与党案に反対する野党を各個撃破するためにつくった資料です」として、この根回しペーパーの存在を暴露し、「民主、公明、自民党、もっと言えば政官業の複合体が、"何をしてでも東電を守るんだ"という強い姿勢のあらわれだ」と指摘した。

(つづく)

【尾山 大将】

| (後) ≫

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