かつて産炭地として隆盛を極めた飯塚市。しかし、エネルギー転換のなかで経済構造の変化を余儀なくされ、人口規模も一進一退の状況が続いている。そのなかでも、企業誘致や中心街活性化などで再建を模索する同市の取り組みから、今問われている地域力について考える題材としてみたい。
<合併の成果と現状>
合併後の面積214.13㎢は福岡県内で5番目の広さを誇る。人口については、合併前の05年度は13万4,011人だったが、09年度は13万1,667人で2,344人減少した。11年4月末現在では13万2,563人で、わずかに増減しながらもほぼ横ばいの状況が続いている。また、高齢者人口および高齢化率は、2,909人、9.81%増と増加傾向にある。
現市長の齊藤守史氏は「株式会社飯塚市」を掲げ、民間企業の経営感覚を取り入れた行財政改革に取り組んでいる。合併の効果について検証した「06年度~09年度 市町村合併の効果と課題」(10年12月発表)によれば、06年度から10年度の5年間で、168人の行政職員の削減を計画していたが、08年度の3年間で200人削減を達成。さらに、09年12月に策定した「同実施計画(第一次改訂版)」において、定数879人を目標としている。
<トライバレー構想>
飯塚市では03年度から07年度まで、トライバレー構想の推進による地域経済の活性化を目指してきた。自治体間競争に打ち勝ち、地域経済を活性化させるため、これまで行なってきた事業を評価したうえで、今後5年間で飯塚市が取り組むべき新産業創出のあり方について「飯塚市トライバレー委員会」で検討された。08年8月、トライバレー構想<第二ステージ>として取りまとめられている。
まず、03年度から07年度まで実施された<第一ステージ>では、08年1月現在でベンチャー企業輩出目標数100社に対し80社(うち30社転出)、従業員数800人に対し730人、売上高50億円に対し15億円(推計)という成果が得られた。12年度には、(1)ベンチャー企業のべ65社の集積と売上高50億円、(2)戦略プロジェクト創出1件/年、(3)雇用の創出1,500人、(4)産学連携成功事例(新規案件)10件/年という目標が設定されている。企業数に関してはともかく、売上規模や雇用創出という点においてはハードルが高いように思える。
トライバレー構想<第二ステージ>では、『大学力』を活かした地域経済の活性化を目指して「日本一創業と成長がしやすいまち」「全国から注目され、情報・人材・ビジネスチャンスが集まる刺激的なまち」の形成を目指す。
【大根田 康介】
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