2011年8月16日、中国高齢委員会が10年度の高齢者事業に関するレポートを発表しました。それによれば、10年末までに全国で老年(60歳以上)人口が1.78億人近くになり、総人口の13.26%を占めるとされています。
上海市では、戸籍人口の1,412万3,200人のうち、老年人口は331万200人、市総人口の23.4%に達し、前年比15万3,200人増でした。研究者の予測では、今のペースで進めば、2030年に上海市の戸籍老年人口は561万2,600人になるとされています。
10年末、60歳以上の年寄りからなる「純老年家庭」の人口は94万5,600人。前年(09年)からすると2万人の増加ですが、07年と比べると8万人も増加しています。一方で、07年から、15歳から59歳までの上海戸籍の労働人口は、マイナス成長に転じている。全国で最初の『戸籍労働人口減少都市』になりました。
急速に高齢化が進むにつれて、現行の社会保険システムが注目を集めています。
現在、退職者の年金と医療保険を支えるため、在職者の月給のうち、会社と個人で合わせて毎月44%を払っており、毎年の最低賃金の上昇にともない、支払うべき社会保険料も増え続けています。しかし、年金人口の継続的な増加から見ると、社会保険システムの収支バランスを取るのはますます難しくなっていきます。
高齢者人口の増加と労働適齢人口の減少が同時に発生している結果、扶養係数が増え続けます。現在は、5人の労働者が1人の高齢者を扶養する計算になりますが、20年になればこれが2.5人に1人となります。
そこで上海は、高齢化社会に対応するため、急ピッチで労働適齢人口を導入しています。昨年末までの人口統計によると、上海市常住の人口2,301万9,100人のうち、897万7,000人が外来人口です。ほとんどの外来の労働適齢人口は2種類に分けられます。IT、金融などに勤めるホワイト・カラーと、建築・製造業などに勤めるブルー・カラーです。
外来人口が安心して上海で暮らしや仕事ができるように、近年上海市政府が彼らに戸籍を条件付けで与えたり、上海の社会保険システムに加入させたりして、色々と努力しています。外来人口のおかげで、全体的に納められる社会保険料が安定的に増え、支出を賄うことを実現しました。
将来を展望し、専門家はいくつかの提言をしています。
ひとつは、定年退職の年齢を延長すること。現行は男性60歳、女性50~55歳で定年退職。これは建国当時の平均寿命によって決められたものですが、21世紀に入り、平均寿命はすでに81歳になっており、退職年齢の延長を望む声があがっています。そこで5年以内に、女性も定年を60歳とし、その後、退職年齢をさらに伸ばしていき、男女ともに65歳とするという提案です。
ただし、これは、若者の就職難と、どういう風にバランスをとっていくかを常に考えながらやっていく必要があると思います。
もうひとつは、老年介護保険制度を導入することです。調査で判明していますが、高齢者の医療費支出において、介護が占める割合は高くなっています。政府主導の福祉型老年介護をメインに民間介護を補助し、多様で持続可能な介護制度を目指すべきだといわれています。介護保険の充実によって、全体の医療費が下がる可能性があると、専門家が分析しているのです。
【劉 剛】
【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。
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