8月24日、荒尾市長は、13億6,000万円の累積赤字を抱える荒尾競馬(熊本県荒尾市)を本年度で廃止する方針を固めた。現存する地方競馬のなかでは最も古い荒尾競馬(1928年2月開設)の廃止に、競馬ファンから惜しむ声も...。今、九州の地方競馬はどのような状況におかれているのか―。
九州における地方競馬は、荒尾競馬のほかに現存する佐賀競馬(佐賀県鳥栖市)と、2001年に廃止された中津競馬(大分県中津市)があった。地方自治体の貴重な収入源であったのはバブル崩壊前までの話。現在は、バブル崩壊後にともなう不況により、ほとんどが厳しい経営状況にある。
2000年、荒尾、佐賀、中津の3地方競馬は、生き残りをかけて『九州競馬』として日程を調整し、「九州グレード(KG)」開催のための格付けの統一や人馬交流戦、場外馬券発売などで相互連携を行なった。しかし、01年、中津競馬が21億円以上の累積赤字を理由に廃止。その後は、荒尾と佐賀のみで連携を続け、02年からはインターネットによる馬券の発売を開始。07年からは馬券の購入システムを統合し、システム開発運用経費を削減。馬券の購入・払い戻しを相互に可能とするなどの対策を講じてきた。
農林水産省HPに掲載されている「地方競馬の概況」によると、1991年度の売上9,862億円、入場者数1,466万人をピークに、全国16の地方競馬は、売上、入場者ともに減少が続いている。2008年度の売上は、1991年度の約40%の3,804億円。入場者数は、同約30%の485万人であった。
荒尾競馬組合によると、荒尾競馬場への入場者数は2008年度・約11万人、09年度・約11万人弱、10年度・約9万人と減少傾向にあるという。また、単年度収支は、08年度が約8,500万円の赤字、09年度が約4,500万円の赤字、10年度が約4,300万円の黒字を計上。累積赤字は08年度から10年度までで、約13億5,700万円、約14億300万円、約13億6,000万円と推移している。
一方、佐賀競馬を運営する佐賀県競馬組合によると、佐賀競馬場への入場者数は08年度・約42万人、09年度・約39万人、10年度・約36万人と同じく減少。単年度収支差は08年度が約7,200万円の黒字、09年度が約4,900万円の赤字、10年度は約1億8,000万円の赤字となっている。08年度から10年度までの累積赤字はそれぞれ、約1,900万円、約6,700万円、約2億4,800万円と、ここ数年で大きくふくらんでいる。
来場者が減少傾向にあるなか、売上を伸ばしているのは、自宅からネットバンクを通じて馬券の購入、払い戻しができる「オッズパーク」、「楽天」などのインターネットによる馬券(以下、ネット馬券)の売上だ。佐賀競馬は、11年度7月開催の第8回競馬までの集計で、ネット馬券の売上は前年度比で約127%と好調であるという。本年度で廃止される荒尾競馬も、11年度1四半期のネット馬券の売上は、前年度同期比約132%であった。
人馬交流のある荒尾競馬の廃止が、佐賀競馬に影響をもたらすことは必至であるが、その打開策のひとつがネット馬券であることを数値が示していると言える。
【吉澤 英朗】
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