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トリアス久山物語『夢の始終』(22)~反対運動
経済小説
2011年9月 5日 07:00

<反対運動を制し基本協定書を締結>
 地元からバリューセンターに反対する運動も起こった。同じ久山町のなかでも今回の開発にかからない久原地区の住民が反対運動を起こしていた。
 久原地区は、町役場もある久山町の中心集落であり、町内でも人口が集中している。商店街もあるため、トリアスに対する反対が起こりやすい環境にあった。

torius22.jpg 1997年3月、町議会宛、500人からなる反対同盟による計画中止の請願が町議会に提出された。
 ようやく中内ダイエーの兵糧攻め(詳しくは後述する)を乗り切った時期であったが、今度は町内からの反対である。それも9月までにトリアスとの町の開発基本協定書を締結しなければならない、というタイミングであった。

 この間、開発許可の手続きは淡々と進んだものの、協定を締結するには町議会の可決が絶対条件であった。このため、早速多数派工作に入った。しかし、お互いの顔色を常にうかがえてしまう町内でのこと、なかなか議員たちは腹を決めてくれなった。
開発対象とならなかった地区の農家の妬み、商業施設が開業すれば売上減少の影響を受ける商店主たちの懸念。いろいろな疑心暗鬼が町内をとりまいた。このため多数派工作は、月曜日の町議会を前にその前の金曜日から小早川、本藤らが反対議員の説得にまわる、というところまで追い込まれた。それでも態度を明らかにしない議員が何人かおり、何度計算しても、議場でふたを開けてみなければわからなかった。
 「やるだけのことをやるしかない」そう自分に言い聞かせつつ、本藤は日曜の深夜まで説得に回った。

 その結果は、7対6という1票差での可決であった。
 これにともない9月12日、「トリアスがバリューセンターを開設することとし、町はそのための許認可などの便宜を図る」という基本協定書が締結された。簡単な取り決めではあるが、それまで開発許認可に関して何の担保もなかった株式会社トリアスとしては、ようやく着工に向けひと区切りをつけ、ほっと安堵した。

(つづく)
【石川 健一】


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<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)

東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


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