中国山東省青島市郊外のホテルで、日々変わり行く中国を観察している現地滞在のフリーライターがいる。福岡と青島を定期的に行き来している彼に、リアルな中国の今をレポートしてもらった。

　現在の中国では、経済成長の副産物であるインフレの進行とともに、工場で働く労働者の賃金も上昇している。これまで中国の工業製品は、安い労働力を背景に国際競争力を維持していたのだが、近年、この労働賃金の上昇に伴い、人手に頼らない生産ラインの自動化、省力化、高付加価値化が求められるようになってきたようだ。

　一方で、いまや中国は「世界の工場」だけではなく「世界の市場」となっている。その市場の拡大は消費財のみならず、生産財にも及んでいる。中国の工場内の機械、工具、部品に至るまで、世界の国々から中国の市場を求めて進出してきているのだ。「日本製の機械で作った中国の確かな製品づくり」ではなく「日本の技術に基づいた中国製の機械で作った中国の確かな製品づくり」が求められている。

　こうした中国製造業ハイテク化の潮流を背景に、電機大手の三菱電機では今年（2011年）６月、江蘇省においてＦＡ（ファクトリーオートメージョン）機器製造工場の建設に着手、12年12月からの稼動を計画している。また、7月には上海市にＦＡ機器のショールーム、コールセンター機能を備えた「ＦＡトータルソリューションセンター」を設立し、「工場の生産ラインの自動化」ニーズに対応する窓口を開設した。「環境、省エネに強い三菱電機」を中国に浸透させ、FA機器の中国シェア30％を目指すという。

　このように、大手企業と同様に日本の中小製造業者が中国市場でビジネスを展開しようとする場合、日本製品としての中国進出ではなく、「モノづくり」技術をいかに現地に技術移転できるかが課題となってきている。日本からの輸出に頼った進出や安い労働力に頼った進出はやがて終焉をむかえることとなりそうだ。

【杉本 尚丈】

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