中国山東省青島市郊外のホテルで、日々変わり行く中国を観察している現地滞在のフリーライターがいる。福岡と青島を定期的に行き来している彼に、リアルな中国の今をレポートしてもらった。
日本は、13年連続して自殺者が年間3万人を超え、人口に対しての自殺率が高いことから「自殺大国」と称されているが、どうも中国の自殺率は日本を超えているのではないかと言われている。
中国で自殺スポットとして有名なのが江蘇省にある南京長江大橋、1968年の開通以来、2,000人以上の人が飛び降り自殺をしているという。揚子江にかかるこの大橋は水面から約70mあり、飛び降りたらほぼ間違いなく死ぬらしい。
また、今年(2011年)6月に開通したばかりの世界一の海上大橋、青島膠州湾大橋では、7月31日に内陸部の湖南省長沙市から21歳の男性がわざわざ青島へ自殺にやってきて海のなかへ飛び込んだという。
こうした農村部から華やかな都市部に出てきて自殺する若者が後をたたないなか、自殺を決行するまでにわめき散したりその場で座り込んだりして時間がかかり、警察やそばにいる人から説得され、約半数は未遂に終わるという。
問題は、いまだ手つかずになっている農村部のサイレントな自殺者の増加だ。インフレの進行が農村部にもおよび、出稼ぎに行った主人の職が決まらず、仕送りが途絶えて一家心中する例が急増しているという。
日本では、不況を反映してか40~60歳の男性の自殺が全体の4割を占めるのだが、中国の場合、15~30歳の若い女性の自殺者が増えているそうだ。
こうしたなか、中国湖北省荊州市で8月27日、汚職取締官が体に11カ所ものナイフで切りつけられた痕をのこしたまま死亡した。また、同月26日には、湖北省襄陽市の監査官が両足のアキレス腱を切られ、ビルから落下して死亡するという凄惨な事件も発生。ふたつの事件の家族は他殺と主張しているが、司法機関はこの2件を自殺と断定したと地元メディアが伝えた。このふたつの事件とも状況からして明らかに他殺なのだが、警察当局が疑問点を残したまま自殺と断定したことに証拠隠滅ではないかとネット上では大騒ぎになっているようだ。
司法と行政が完全に分離されていない中国ではこの種の『自殺』も後をたたない。汚職で逮捕された容疑者が獄中で不審死を遂げてもほとんどが自殺として処理されているという。
【杉本 尚丈】
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