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トリアス久山物語『夢の始終』(25)~払下げ土地を私物化
経済小説
2011年9月 8日 07:00

<払下げ土地を私物化>

 1990年秋、福岡ドームの鉄骨工事をめぐっての収賄容疑で、ドーム運営会社の専務取締役が逮捕された(後に無罪)。この事件は、地元マスコミでセンセーショナルに報道されたが、そのなかである新聞の記事が目を引いた。

ダイエーは当初、ダイエーが100%出資した... ダイエーは当初、ダイエーが100%出資した子会社である福岡ダイエー・リアルエステートを設立して、この会社を受け皿として市有地の払下げを受けた。
 なかでも「スポーツドーム」の用地は割安な坪単価での取得であった。このことは、市議会の野党から見れば、市有財産を一民間企業に対して不当に安く払下げたものであり問題とされた。

 さらによくないことに、払下げを受けた後に、福岡ダイエー・リアルエステートは、中内正の個人会社であるダイエー都市開発から当初、出資の2倍の増資を受け入れたことが一部新聞で報じられた。
 こうなると、福岡ダイエー・リアルエステートの議決権は、その3分の2を中内正が押さえることになる。議決権3分の2を確保すれば、株主総会で特別決議が可能であり、実質的にその会社を支配したことになる。つまり、中内ダイエーは、安く払下げを受けた土地を、実質的に中内家の資産にしてしまったのである。

 このような疑惑報道には、必ず内部からの情報提供者がいる。この疑惑報道に対してダイエー側はノーコメントを貫いたが、翌年になり、改めてダイエーおよびグループ各社より福岡ダイエー・リアルエステートに対して増資することで、再び同社をダイエー支配下に戻している。
 やはり、見透かされた以上は、これではまずいと考えたのであろう。

 結果的には、ダイエーは、この土地保有しいては福岡3点セットへの投資があだとなって大きく財務を悪化させてしまう。だがこのときは、まだバブル経済が続いていた。そういう時代背景ゆえこの事件は、「福岡市が税金で埋め立てた用地を安く払下げて中内家の私腹を肥やした」という筋書きで受け止められ、福岡でのダイエーのイメージをますます悪化させた。

 のちのダイエーの福岡3点セットの事業展開は、このようにマスコミによりネガティヴキャンペーンを打たれるほど地元のファン、商店街、それに財界からも白眼視されるところからスタートしたのである。それがだんだんとファンに受け入れられ、財界に受け入れられ始めたのは93年に福岡ドームが開業して以降、地元商店街などにも受け入れられるようになったのは2000年以降のことだ。

 またも前置きが長くなったが、この中内ダイエーの絶頂期に、久山町の構想が引っかかってくるのである。

(つづく)

【石川 健一】

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<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)

東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


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