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チャイナビジネス最前線

事故現場、救急車より早く来るカメラマン!~中国の素顔(40)
チャイナビジネス最前線
2011年9月12日 07:00

 中国山東省青島市郊外のホテルで、日々変わり行く中国を観察している現地滞在のフリーライターがいる。福岡と青島を定期的に行き来している彼に、リアルな中国の今をレポートしてもらった。

 日本では、毎日救急車のサイレンを聞かない日はないぐらいに頻繁に救急車が利用されている。交通事故が発生したときはいち早く現場に駆けつけ、意識不明の人も軽傷の人も救急病院まで運んでくれる。もちろん無料で利用でき、救急車を要請した人がお金を払うこともない。

 一方、中国で交通事故が発生した場合、現場に一番に到着するのは救急車ではないようだ。事故によっては救急車より霊柩車のほうが先に到着することがあるという。なぜかといえば、救急車は有料だからだ。救急車を要請するとき支払確認をして出発するので、確認が取れなければ出発が遅れる。そのため、タレこみや警察情報で現場にいち早く到着するのは地元新聞社の記者かカメラマンなのだ。警察も日本のように現場をシートで覆ったり、あまり現場保存規制をしたりしないので、生々しい写真がインターネットに掲載されることが多い。

事故現場撮影する警官

 都市部では改善されてきたようだが、ひとたび都市部を離れると単独事故の場合、事故を目撃した人が救急車を要請することはほとんどなく、警察が現場に到着したあと警察の判断で救急車を要請することが多いようだ。先日発生した列車事故のような公共交通機関の事故であれば、身元が分からない人でも運んでくれる。政府や保険によって搬送費用を取りっぱぐれることがないからだ。

バイク事故事故を目撃する人たち

 中国では車の増加とともに交通事故が多発、救急救命体制の整備が求められているのだが、地方に行った場合はとくに注意する必要がある。何らかの原因で道路に倒れていても野次馬はだれも助けてくれない。警察には連絡してくれるが、だれか知り合いがいて「救急車呼んで」と言わないかぎり救急車は来ないのだ。ひとりで倒れていると酔っ払いか、熱中症か、寝ているのか、交通事故か、ヤケになっているのか、野次馬にはわからない。ましてや倒れている人が救急車代を払えるのか払えないのかなんて判りようもないのだ。親切心で救急車を要請すると、救急車を呼んだ人が救急車代を払わなければならなくなってしまう。救急車の料金はタクシーと同じように距離で決まるので田舎のほうに行くと大変な額になってしまうのだ。運よく病院にたどりついても治療代が払えることが確認できなければ治療をしてくれない。

 中国の国際化に伴い、いまでは少しずつ整備されつつあるが、まだまだ「地獄の沙汰も金次第」の社会制度の国であることを忘れてはならない。身分証明も持たない単独周遊には十分注意が必要だ。


(つづく)

【杉本 尚丈】

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