中国山東省青島市郊外のホテルで、日々変わり行く中国を観察している現地滞在のフリーライターがいる。福岡と青島を定期的に行き来している彼に、リアルな中国の今をレポートしてもらった。
このほど、2011年の中国大富豪ランキング(胡潤百富)なるものが発表された。このランキングは、上海在住のイギリス人公認会計士、ルパート・フージワーフ氏が、99年から毎年出しているもので、中国国内でもかなりの注目を集めているものだ。それによると、今年のランキング1位には、建設機械大手・三一重工の梁穏根氏が、総資産額約700億元(約8,470億円)でトップになった。ちなみに「三一重工」は東日本大震災後に、福島第一原発を冷却するためのポンプ車を日本に寄贈したことでも有名になった企業だ。ちなみに、大富豪トップ10のうち、不動産関連が5人を占め、大富豪の上位は投資で着々と財を築いていることがわかる。
しかし、こうしたランキングには出てこない富豪が、中国にはもっと大勢いるというのが、世間の大半の見方のようだ。中国人は、裕福になればなるほど、海外に移民する傾向が強いという。国内にとどまれば、寄付を求めてくる人間が後をたたず、怖い思いをすることが多いからだそうだ。アメリカなどでは、不動産や株式など、すべての財産について、国税局が厳しくチェックしているので、ランキングを出しやすいのだが、社会制度の整備がいまだ脆弱な中国では、本当の富豪がどれだけいるかなど、調べるのは困難な状況だ。
ちなみに、昨年のある報告によると、過去10年間にランクインしたなかに、不祥事を起こした富豪が24人いるそうだ。主な罪名は、賄賂、インサイダー取引、詐欺などであるが、不祥事を起こす年齢は概ね40歳代だという。どこの国も急に成り上がった人間、二代目のお坊ちゃん社長は、犯罪に手を染める率が高いようだ。
なお、大富豪にランクインしている人の子供は、ほとんど若くして留学させているという。留学先で人気があるのは、1位がアメリカ、2位、イギリス、3位カナダとなっていて、欧米諸国が並ぶ。残念ながら日本は上位にランクされていない。
日本では時折、札束を持った中国人のすごい買物ぶりがテレビなどで報じられるが、このようなデータから見ても、中国の大富豪は日本にはあまり興味がないようだ。不況にあえぐ日本は、彼らから目を向けてもらえるような社会の仕組みをつくる必要があるような気がしてくる。
【杉本 尚丈】
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