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トリアス久山物語『夢の始終』(29)~島原閥企業をスポンサーに
経済小説
2011年9月14日 07:00

<島原閥企業をスポンサーに>

 両社とも、長年島原エリアで行なわれる公共工事を幅広く手掛けることにより内部留保を蓄積してきたが、21世紀を目前にして、それまでのような公共投資が今後も続くとは思えず、新たな柱となるようなサービス業への展開を目指しているところだった。

島原閥企業をスポンサーに ヤマックスは熊本市が本社だが島原半島をルーツに持ち、公共工事などに用いるコンクリート製品の大手であった。
 工事で使用するコンクリート製品というとU字溝や土管などが思い浮かぶが、それらを水平展開し、コンクリートの橋脚や用水路の躯体など、さまざまな製品を展開している。1995年には店頭市場(当時)に登録し、上場会社としてコーポレートガバナンスの充実を図るとともに、市場のプレッシャーをバネに成長を図ろうとしていた。建設関係の市場の先細りを予見し、何かサービス分野に進出し第二の稼ぎ頭を確立しようという気持ちもあったに違いない。

 宅島建設は、現在も島原を拠点とする建設会社(本社は雲仙市)である。
 79年に現社長が経営を継承した後、家業から企業への転換を図ってきた。90年代以降は多角化を進め、運送会社・バス会社・重機販売などに進出してきた。地域貢献にも積極的で、普賢岳噴火の際は復旧工事に注力した。噴火で大被害を受け寸断された島原鉄道の増資に応じ、筆頭株主となって同線を全線開通させた。地元の「道の駅」の運営にも参加していった。これらの沿革からも、地域貢献と同時に、経済のサービス化の流れについていこうと努力してきたことがわかる。総工費115億円のトリアスの工事も請けられ、トリアスへの出資は願ったりかなったりであったかもしれない。(実際には、地元重視の観点から、全体を元請することはできなかったが)。

 両者の出資を受け、株式会社トリアスは何とか開発を続行できることとなった。

 資金については、ダイエーの圧力で福岡の主要3行にはいずれも断られた。

 これは、ヤマックスおよび宅島建設からの出資に加え、県の商工部に相談した結果、県の融資保証制度を活用することにした。そもそも県の融資保証は中小企業が対象だが、トリアスも地域おこしに不可欠な事業ということで、福岡県の保証枠を検討していただいた。のちに副知事となる当時の商工部長が尽力してくれ、これが実現した。
 この結果、トリアスは県の保証により、さくら銀行から20億円の融資を受けることができ、ヤマックスおよび宅島建設からの出資および融資も合わせて何とか開業に向けた資金を調達することができた。

(つづく)

【石川 健一】

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<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)

東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


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