中国山東省青島市郊外のホテルで、日々変わり行く中国を観察している現地滞在のフリーライターがいる。福岡と青島を定期的に行き来している彼に、リアルな中国の今をレポートしてもらった。
9月8日、日本でも有名なルイ・ヴィトンは中国国内39店舗目となる直営店を重慶市にオープンした。オープン当日は、この日の出店を待ちわびていた重慶のルイ・ヴィトンファンがどっと押し寄せた。同ブランドの認知度の高さをうかがい知ることができる。
1992年に中国に進出したルイ・ヴィトン、2005年には上海、北京など大都市を中心に12店舗だったが、中国の経済成長を反映して5年足らずの間に地方都市にまでまたたく間に出店攻勢をかけていった。さらに、ルイ・ヴィトンの富裕層、中間層をターゲットとしたブランド戦略は中国の文化をも動かしていったのだ。
今年(11年)5月31日から8月30日までの3カ月間、中国国家博物館で開催された「ルイ・ヴィトン芸術展」では、1845年にルイ・ヴィトンが創立されてから現在までの代表的な芸術品や文献、有名人の私物なども展示され大盛況だったという。この展示会は、「開館間もない国立の博物館としては、中華文明の展示をするのがふさわしい。軽薄にも世界的なぜいたく品のブランドに身売りするとはなにごとか!」など、多くの反対意見も出され、物議を醸したものだ。
しかしながら、国家博物館としては「国家博物館は改修前、中国歴史博物館だった。厳粛で重厚な感じを与えていたものだ。今回のLV展示会を呼び込んだことで、博物館のイメージは新鮮で快活、新時代の息吹、そして包容力を感じるものとなった」と、展示会の成功に自信を示し、「芸術とビジネスの素晴らしい融合であり、人々に美の享受を提供できたと信じている」という。
かつての日本がそうであったように、80後、90後(1980~89年生まれを「80後」、1990~99年生まれを「90後」という)の若い世代もブランド品に目を向けるようになってきた。中国の若者の間でルイ・ヴィトンはもっとも認知度の高いブランドのひとつとなっているようだ。中国の地方都市でも「ルイ・ヴィトンのバッグを片手に、安い野菜を買いに行く」という若者の姿が見受けられる日も近いだろう。
【杉本 尚丈】
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