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トリアス久山物語『夢の始終』(30)~嵐のなかの旅立ち
経済小説
2011年9月15日 07:00

<嵐のなかの旅立ち>

 1999年に入った。
 開発許認可と資金繰りの困難、町内の反対、それに中内ダイエーの兵糧攻めと、(株)トリアスは開業前にここまでの煮え湯を飲まされてきた。
 そのうえ、敷地内で文化財が出土したことで半年ほど工期が遅れた。しかし、ようやく4月にはオープンが可能な運びとなった。

トリアスは開業した... もともとアメリカ発祥のチェーンストア経営理論に従って、店舗建物は10年持てばいい、という仕様で設計されていた。それに大半の建物が平屋建てだった。これも店舗内の作業の効率向上を意図したもので教科書通りであった。このため建物の工事自体はあっという間に完成した。

 99年に入ると、各テナントが店舗の内装工事を始めた。内装が進むと、殺風景な倉庫のようだった建物が途端に華やかに見えてくる。3月に入ると什器や備品も搬入されはじめた。4月に入ると商品も続々入ってくる。従業員も各店それぞれのユニフォームを着て教育訓練を始める。

 いよいよオープンが近づいた。

 オープンを前に、関係者を招いての記念パーティが開催された。
 その頃、小早川は末期がんで入院中だったが、パーティが開催されると聞き、「無理してでもいってあいさつをする」と、言った。周りは、体に障るからといって止めようとしたが、決意が固かった。そして、痩せた体に、サスペンダーでズボンを吊った状態でスーツを着て会場に出かけて行った。

 小早川は病気を押してトリアスの開業セレモニーに姿を現した。たぶん感慨無量だったのであろう。このときの写真が残っているが、げっそりとこけた頬が過酷な闘病生活を偲ばせた。それでも、小早川は、「わしが作った街がようやく完成だ」といって、久しぶりに機嫌よさそうにしていた。

 99年4月23日、構想から5年の歳月をかけてトリアスは開業した。

(つづく)

【石川 健一】

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<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)

東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


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