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トリアス久山物語『夢の始終』(31)~トリアス久山オープン
経済小説
2011年9月20日 07:00

<トリアス久山オープン>

 1999年4月23日朝、トリアスでは華々しいオープンセレモニーで佐伯新町長を招いてのテープカットが行なわれた。鳴り響くファンファーレとともにお客が一斉に店内に流れ込んでいく。

 開発関係者にとってはもっとも感動する一瞬であった。

トリアス久山物語『夢の始終』 もともと市内の土地の96%を市街化調整区域に指定する、というユニークな都市計画を立てていただけに、構想を発表するとともに賛否両論が渦巻いた。7万6,000坪の大規模開発であったが、計画からわずか3年で完成に至り、この点でも世間を驚かせた。オープンとともに周辺道路は激しい渋滞に悩まされたが、これも県警交通課と所轄署が必死で対応に当たり、やがて沈静化していった。

 オープンしてしばらくして工事代金を支払うと、預金はほとんどなくなってしまった。
 あとは、毎月のテナント売上に応じて入ってくる粗利益から運営会社の経費を引いた残りで、開業資金を毎月返済していかなければならない。計画段階でダイエーの妨害により資金を絶たれ、権利を譲渡しないと潰れると脅される始末であった。
 それでも、地域主導の町づくりをやり遂げるためには、決して一企業人には権利は渡さない、という小早川の反骨精神と町の将来を夢見た情熱によって乗り切ってきたのである。

 オープン初年度の売上は127億円、集客は年間1,200万人と上々のスタートとなった。折からの不況により計画の350億円に対しては大幅な未達であったが、雇用・税収への貢献という点で、地域に与えるインパクトは大きいものがあった。
 さすがにこのときの平山は絶頂期にあった。今後、2005年(平成17年)までに全国に10カ所のトリアスを開設するのだという成長戦略も打ち出した。

 しかし、今後新たに進出する土地で、どのように地権者をまとめていくのか、その内実は何もなかったといっていい。

(つづく)

【石川 健一】

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<プロフィール>
石川 健一 (いしかわ けんいち)

東京出身、1967年生まれ。有名私大経済学卒。大卒後、大手スーパーに入社し、福岡の関連法人にてレジャー関連企業の立ち上げに携わる。その後、上場不動産会社に転職し、経営企画室長から管理担当常務まで務めるがリーマンショックの余波を受け民事再生に直面。倒産処理を終えた今は、前オーナー経営者が新たに設立した不動産会社で再チャレンジに取り組みつつ、原稿執筆活動を行なう。職業上の得意分野は経営計画、組織マネジメント、広報・IR、事業立ち上げ。執筆面での関心分野は、企業再生、組織マネジメント、流通・サービス業、航空・鉄道、近代戦史。


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