中国山東省青島市郊外のホテルで、日々変わり行く中国を観察している現地滞在のフリーライターがいる。福岡と青島を定期的に行き来している彼に、リアルな中国の今をレポートしてもらった。
人気アイドルグループSMAPが9月16日夜、北京工人体育場で海外初のコンサートを開催した。日本からも多くのSMAPファンがつめかけたこのコンサートは「がんばれ日本、ありがとう中国、アジアはひとつ」と題して、東日本大震災に対し援助してくれた中国人に感謝を伝えるとともに、日中両国の友好関係を促すという目的で開催され、2万人以上の観客を集め大盛況だったようだ。
中国でSMAPのコンサートが計画されたのは今回で3回目、過去2度のコンサートは政治的な理由から中止となっている。2010年、尖閣諸島での漁船衝突事故によって日中関係が冷え込み、直前まで準備されていた中国でのコンサートが中止となった経緯がある。
中国で有名な日本人歌手は浜崎あゆみさんや倉木麻衣さんなど女性歌手が中心だった。男性歌手やグループがコンサートを開催しようとするときはどうしても日中関係が良好なときにだけ受け入れられる傾向にある。ましてや、SMAPのように国民的アイドルグループだとなおさらだ。しかし、日頃から批判的な記事を掲載する中国メディアも今回のSMAPのコンサートに関しては、そういう記事は見当たらない。日本のメディアのみならず、中国のメディアもSMAPのコンサートを大絶賛しているようだ。
その大絶賛の要因のひとつにサプライズゲストでステージに登場した林志玲(リン・チーリン)さんの存在がある。彼女は台湾出身のモデル兼女優で、中国ではとくに男性から人気がある。中国では毎日のようにメディアに登場し、その物腰の柔らかさから記者たちのなかにもファンが多いという。日ごろ批判的な記事ばかり書いている中国人記者も、彼女が好意的に接する日本人グループを批判するわけにはいかないというところが本音だろう。
林志玲(リン・チーリン)さんは2010年、日本のドラマ「月の恋人」で木村拓哉さんと共演し人気を博した。SMAPとは同年代の37歳になる彼女だが、身長175cmのスラリとした容姿で中国本土、香港、台湾の架け橋役として大活躍しているのだ。
今回のSMAPのコンサートで見るように、文化の融合がアジアの国々と友好関係を保つひとつの手段となってきている。9月25日にはEXILEが倉木麻衣さんなどとともに北京国家体育場で開催される「三国演義 中日韓風雲音楽祭」に出演する予定だ。EXILEとしては中国での初ライブ、3カ国のアーティストが集うこのコンサートもアジアの文化の融合として注目されている。
【杉本 尚丈】
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