<行動力でリーダーシップを発揮した河部浩幸会頭>
河部浩幸会頭は、(株)九電工の生え抜き社長として桁違いの行動力で同社の業績を躍進させた実績がある。その持ち前のパワフルな行動力を活かして福岡市商工会議所会頭として2期4年間、全力投球をしてきた。おそらくマスコミへの露出度は過去の会頭たちと比較にならないほど数多かったであろう。ある意味、商工会議所の広告司令塔としての役割を充分に果たしたことは誰もが認めるところである。
(株)九電工の社長、会長として如何なく行動力を駆使し商売を伸展させることに周囲が口を挟む余地はない。しかし、商工会議所の組織は大半が中小企業の会員で構成されている。家に帰ればお山の大将たちだ。ひと言もの申すことを生きがいにしている方々である。だからこそ河部会頭の指導力に感服する会員もおろうが、「勝手に動き回って」という不満を抱く会員の存在もあった。その不満が高じて会頭三選反対に発展したのである。
<10月3日の部会長会で河部会頭交代が実質、決まり>
商工会議所の組織は業種ごとに11部会に分かれておりそれぞれに部会長がいる。その部会の会員数に応じて振り分けられ1号議員、2号議員、3号議員に選ばれる(定員が120名)。また120名の各号議員から選出された常議員がいる。また副会頭は会頭の指名で現在、5名いる。願わくば「河部会頭がこの組織を巧妙に運営して議題などを審議していく気配りをしておれば」と、悔やまれる(本来、気配り・配慮の天才だった人なのだが)。
変調は6月に生じていた。本来、会頭改選時期に当たる年には6月に組織内では内定するものなのだ。だが、今回は、河部会頭の3選が内定されなかった。9月になるとマスコミが面白おかしく取材を始めだした。河部会頭を指示する勢力は焦燥感を抱いた。10月3日、11部会長会議で会頭決定信任投票が行なわれた。結果は1票が白紙、信任5票、反対5票となった。イーブン引き分けとなったのである。
河部会頭は「我が進退はすべて委ねる」と公言されていた。だから「決選投票までいって会頭の職には執着はしない、あらぬ対立心を残したくない」と、判断して次の会頭に就くことを断念した。もちろん、過去において会頭をめぐる対抗選挙の例は稀有である。そして現在、副会頭の要職にある末吉紀雄氏(コカ・コーラウエスト・代表取締役会長)の新会頭誕生が内定したのだ。
福岡財界のトップ『七社会』以外から会頭誕生は久しぶりのことである。さて、本質的な問題はどこにあったのか? 河部会頭の独走への不満から末吉新会頭の発足になったとみるのは一面に過ぎない。人事のトラブルが起きれば昔であれば『七社会』、とくに九州電力側が仲裁に入って会頭が選ばれていた(当然、『七社会』から先発された)。ところが九電にはもう他人さまの『火中の栗』を拾うなどの余裕はない。他の『七社会』の経営陣で福岡市商工会議所の『百年の計』を考える逸材は見当たらない状況である。
ここに画期的な意義が見いだされる。『七社会』に代表される地元の財界は中小企業の集団で構成される『福岡市商工会議所』へ干渉する気力も薄れた。その間隙をぬって初めて中小企業のオーナーたちの意向で福岡市商工会議所の会頭が決定されたことが歴史的な意義になるのである。ここから先が問われる。末吉新会頭は根回しによる組織運営に徹していくであろう。時間とともに末吉色は強まっていくのは間違いない。問われるのは新体制を支える中小企業のオーナー経営者たちが商工会議所組織の向上に充分に貢献できるかということである。
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