高島市長が就任なされる以前から、人工島事業は、福岡市政の懸案事項でありました。「福岡市の負の遺産」「呪われた事業」と揶揄(やゆ)される同事業には、市長も頭を痛めていることと思います。8人も立候補した2010年の福岡市長選挙で見事、初当選なされた時も、同事業が争点のひとつとして、大きくクローズアップされました。
同事業のはじまりから現在に至るまで、昔から福岡市に住んでいる市民にとっては、その成り行きをご存知の方は少なくはありません。しかし、毎年、多く人の転出入がある福岡市では、とくに新しく来た市民からは、「なぜ、目的も定まっていないのに埋め立てをしているのか?」といった疑問の声がよく聞かれます。そうした市民のために、きちんとわかりやすく『おさらい』をしておくことも大事かと思います。
そもそも福岡市東区のアイランドシティ(人工島)は、博多湾の浚渫工事よって運び出された底面の土砂によって作られました。もともと博多湾は遠浅であるため、かつて、博多港は、貨物が最初に積み降ろされる『一次港』ではなく『二次港』でした。よその港を経由して食料・品物などが運びこまれるため、その分、物価は高くなります。したがって、福岡市民の生活を楽にするためにも、博多湾の底を深く掘って大きな船が入れるようにし、一次港化することは必要課題でありました。その後、ハブ・ポートを目指し、さらに大型化は進んでいきます。
しかし、バブルの崩壊によって、当初、描いていた青写真も崩壊します。アイランドシティ同様の埋立地であった百道浜(福岡市早良区)のように土地の売却は進まなくなり、博多港の規模が拡大する一方で、いわゆる『負の遺産』が形成されていったのです。もちろん、ただ手をこまねいているわけにはいきませんから、さまざまな誘致案が浮上。それらも成就することなく、現在に至っています。今では、一斉に改修時期を迎える老朽化した公共施設の移転というアイディアもあるようですが...。
そのなかでも画期的なアイディアと、一時期、注目されたのが、パラマウント映画のテーマパークとエンターテイメントの教育施設であるUCLAエクステンションのセット誘致です。一説によると福岡市には、5,000万円の費用を投じて作成された同計画の可能性市場調査の結果があるとか。それには、「1万5,000人の雇用と2,000億円の経済効果を生み出す」との内容があったと聞いています。(実際に、その写しと言われるものが巷に出回っているそうです。)
さて、現在、福岡市では、「アイランドシティ未来フォーラム」という第三者委員会を設置し、有識者や住民代表を集め、アイランドシティの未来について協議されています。もし、前出の資料が残っているのなら、ひとつの参考資料として提供されてみてはいかがでしょうか?
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