「行政改革」の取り組みは、前述した行政(官僚)組織が抱える課題に対応するためのものと、行政のスリム化や官民共働による行政手法の見直しなど、社会経済状況の変化に対応するためのものというふたつの区分が可能であると思いますが、社会経済状況も日々刻々と変化していることを考えれば、いずれにしても、市役所は「市民のために変わらず成果を出し続けるために、常に変わっていかなければならない」と言えるのではないでしょうか。
より俯瞰して換言するならば、民主主義そのものが、多数決原理にみられるように絶対的な正解というものはなく、社会の不安定性と不完全性を前提にしたシステムであり、常に変化・変革への提案とその実現への努力が求められており、時の変遷とともに不断の手直しを行なわなければならない制度であると言うことができると思います。
少し脱線してしまいましたので話を戻します。
「行政の無謬性、継続性、秘匿性」のもたらす弊害のなかで、市長として最も注意を要することは、「市役所の課題が見えにくい」ということです。
前編で掲載した山崎広太郎氏の文章のなかにも、市長に初当選後の山崎氏に対する行政サイドのレクチャーについて、「厳しい財政状況のなか、『こういう目的で始めたけれど、こういう状況の変化があって、こういう問題を抱えている、どうしたらいいだろうか』という話が聞けるのではないかと期待していましたが、すべての事業が問題なく、粛々と進行しているということでした」と、語っているように、黙ってじっとしているだけでは、市役所内の真の課題はなかなか市長へはあがって来難いのです。
真に信頼できるブレーンを複数そばに置くとともに、市長自らも情報収集する力が要求されるでしょう。
それぞれの行政分野における「真の課題」は、多角的な視点からの情報を収集し、それを分析することにより浮き彫りになってきます。したがって、ベテランの幹部職員の意見とともに、改革志向の若い職員の意見を十分に引き出していただけるように切にお願い申し上げます。
そして、課題解決に向けた効果的な方策を検討し、ひるむことなくそれを断行していってください。一時的にハレーションが起こったとしても、逆にそれによって、課題の場所が明らかになります。最後まであきらめない者が最終的には勝者となっていくと思います。
マックス・ウェーバーは、「政治とは、情熱と判断力のふたつを駆使しながら、堅い板に力をこめて、じわっじわっと穴をくり抜いていく作業である」と言っています。
子どもたちの時代に胸を張ってバトンタッチできるように、より良い福岡市のために、ともに頑張ってまいりましょう!!
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