<「日中中間線」と「大陸棚自然延長」の対立>
日本から見れば裏庭、中国からみれば正面玄関なのが東シナ海である。日本と中国が向き合う東シナ海は、国連海洋法条約で定めた他国が手出しできない排他的経済水域(EEZ)が日中間で重なり合っている。
日本は日中双方の沿岸線から等距離の地点を結んで境界線として、北西側は中国、南東側は日本の専用区域とする「日中中間線」論を主張している。
それに対して中国は、大陸棚条約の「大陸棚自然延長」論に立って、大陸から張り出した大陸棚はすべて中国の排他的経済水域とし、沖縄、南西諸島の北側にある沖縄トラフトまでがすべて中国のものであるとすると主張。日本の「日中中間線」論を認めていない。
中国が「日中中間線」論を認めない最大の理由は、日本が尖閣諸島を日本側の中間線内に含めているからである。日本にしてみれば当然の中間線の線引きであるが、中国にしてみれば、この線引きを認めれば、尖閣諸島領有の主張が根底から崩れてしまうからである。
「日中中間線」論も「大陸棚自然延長」論も、どちらも国連海洋法条約で規定されている立場であるため、日中間の境界線画定交渉は延々と進んでいない。
ところが中国はベトナムと係争していたトンキン湾の境界画定問題では、中国自身が双方の沿岸から等距離の地点に境界線を引くことを主張し、最終的に中国の主張にほぼ近い形で、境界線画定問題に決着を付けている。
中国にとって、国連海洋法条約の規定は、自国の都合に合わせて、「領有および境界線」の根拠を主張する道具として利用しているだけなのである。
<中国によるガス田開発>
中国が東シナ海で次々とガス田開発を行なっているのは周知の事実である。中国がガス田開発に乗り出したのは1970年代からで、80年代に入ると、「日中中間線」に近い中国側海域の数カ所でボーリング調査を実施した。平成8(1996)年8月には、北京で開催された世界地質学会で、「今世紀中に、東シナ海で海底掘削を本格的に開始する」と発表した。
これを受けて、中国海洋石油公司(CNOOC)は平成10年(98)4月には、「日中中間線」から約70キロメートル中国側にある「平湖ガス田」に採掘と処理を兼ね備えた施設を完成させた。同年12月には正式に稼働し、海底に敷設したパイプラインを使って、上海へ天然ガスの供給が始まっている。
平成16(2004)年5月には、中国の国家重点プロジェクトとして「日中中間線」からわずか4キロメートルしか離れていない「春暁ガス田」に採掘施設の建設を開始したのである。同時に「天外天ガス田」に採掘と処理を兼ね備えた施設の建設も開始され、翌平成17年(05)5月に完成している。
「平湖ガス田」と違い、「春暁ガス田」「天外天ガス田」は日中中間線の日本側の領域にまで続いており、中国側での採掘であっても、ストローで日本の資源が吸い取られてしまう恐れがある。当然、日本は、両ガス田の開発の中止とデーター提供を求めたが、中国は一切応じていない。
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