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第三者委員会で見えた九州電力の企業体質とトップの責任(後)
社会
2011年11月 9日 07:00
九州大学大学院 法学研究院 教授 阿部 道明 氏


 11月24日(木)午後6時30分から、福岡市中央市民センターで、九州電力「やらせメール」問題の第三者委員を務めた九州大学大学院の阿部道明教授を講師に招き、特別講演会「やらせメールとコンプライアンス」が行なわれる。それに先がけて、阿部教授に、「やらせメール」問題の背景についてインタビューを行なった。
 なお、同講演会では、「やらせメール」問題を事例として、近年、企業に求められているコンプライアンスおよび、それを徹底させるための手法などについての説明も行なわれる。

 ――「原発のために」という想いが強かったのでしょうか。

 阿部 原子力比率が高い九電では、それが「九電のため」になります。同時に、「自分たちは日本の原子力を背負っているのだ」という意識が非常に強いのだろうと思います。だから何か起こっても、とにかく行政サイドを見ながら内部で隠そうとする。現在の日本の原発を取り巻く状況をみると、ある意味、それはやむをえないことだと思います。とくに九電が異常というわけではない。その部分に関しては。東電もそうでしょうし、どこの電力会社でも同じだと思うのですが...。

 今回の「やらせメール」は法令違反ではありません。『コンプライアンス』とは、必ずしも法令だけではなく、社会的道徳的に許容できないものも含んでいます。その認識が、法令違反に対する認識に比べて弱かった、ということはあるでしょう。先ほど述べたように、原発は規制でがんじがらめですから、原子力部門の社員は、法令を守ることに関しては非常に長けています。それ以上のことに関してなかなか考えが至らない、ということがあるのかもしれません。

<変化に対応しなかったトップに大きな責任>

 ――極端に言えば、法令を守るために社会的道徳的なものが軽視されるという傾向も?

 阿部 『法令遵守』と並んで『地域対策』というものをものすごく念頭においています。『地域対策』は、本当に住民の意向を真摯に聞いて、それを受け容れようということよりも、まず形式をそろえるために公聴会をやるとか、住民の理解を得たとかというかたちをとって進めていくことが原子力発電計画のプロセスから考えられてくることもあるでしょう。それを重要視するが余り、何とか形にしようと、『やらせ』というものが出てくる。これはもちろん九電だけではないのでしょうが...。

 ――そのへんで、社員に問題意識はなかったのでしょうか。

 阿部 九電の社員に対して実施したアンケート調査では今回の件に関しては問題意識のある社員と二分されていました。

 ――九電の佐賀支店長の『メモ』にある古川康佐賀県知事からの言葉は、第三者委員会の結論的には、やはりひとつの『きっかけ』であったと。

 阿部 我々の認定としては、古川知事がそういう意図で『やらせ』を命じたということまでは、読み取れない。だから、知事の意図は措くとして、客観的な因果関係からいうと、知事の話した内容が発端で、いわゆる課長級社員の『やらせメール』につながったという認定をしているわけです。
 九電側は「佐賀支店長が書いたメモが発端だ」と言っていますが、佐賀支店長が自分で作文してそういうメモを書いているわけはなく、知事の話を聞いて書いているわけです。

 ――同問題に関して、九電トップの責任についてはどのようにお考えですか。

 阿部 コンプライアンスを守るためには、まず『トップがその重要性を認識して社内でそれを宣言する』ことが重要です。今年3月、福島第一原発事故の発生以降、世のなかの原発を見る目は激変し、賛成派と反対派(漠然とした感覚的な意識の人を含む)が逆転したともいえる状況かと思います。その変化への対応を見誤っていることは、トップの責任問題だと思います。

 ――その意味では、『やらせメール』問題におけるトップの責任は大きいという風に感じます。本日はどうもありがとうございました。

(了)
【山下 康太】

≪ (前) | 

■九州大学大学院・阿部道明教授が語る「やらせメールとコンプライアンス」

<日 時>
 11月24日(木) 午後6時30分~午後8時(開場:午後6時10分)

<場 所>
 中央市民センター・ホール
 (福岡市中央区赤坂2-5-8)
 ※市営地下鉄赤坂駅より徒歩約5分
 TEL:092-714-5521

<参加料>
 2,000円(税込)

<講師紹介>
阿部 道明氏.jpg阿部 道明 (あべ みちあき)
1975年3月、東京大学法学部卒業。75年4月、(株)東芝に入社し、法務担当に配属。81年8月~82年6月、カリフォルニア大学バークレー校ロースクール留学(法学修士)。82年7月~82年12月、米国の弁護士事務所に勤務。83年1月、(株)東芝に復帰し、法務担当。以後、本部、家電パソコン担当、半導体担当にて法務担当(課長、部長)を歴任する。2001年4月、九州大学大学院法学研究院助教授。03年7月、同教授。現在に至る。コンプライアンス関係では、九州電力(株)本店、各支店、福岡県経営者協会でコンプライアンスの講演を行なうほか、九州電力CSR報告書に第三者意見を記載(06年および07年)。11年7月から9月まで、九州電力『やらせメール』問題に関する第三者委員会委員を務める。

<講演内容>
 1.「コンプライアンス」とは何か?

 2.不祥事発生のメカニズム(日本企業の特徴)

 3.二次的不祥事を防ぐための事後処理

 4.防止策(コンプライアンス・プログラム)

 5.九電の「やらせメール」とは何だったのか?

<お申込・お問い合せ>
 (株)データ・マックス 緊急講演会事務局(担当:山下康太)
 TEL:092-262-3388
 FAX:092-262-3389

 以下、メールフォームおよびPDF


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