2008年(平成20年)9月のリーマンショックから3年を経過。それまで本部からの高いノルマを達成するために、地銀の営業マンは3月、9月の決算期を中心に手早く役務収益が得られる投信販売を勧誘していたため、顧客に大きな含み損を与えることになった。
その後株価は幾分回復し、年初の1月4日の日経平均(終値)は、10,398円、2月18日には、今年最高値の10,842円と回復する兆しがあった矢先、3月11日の東日本大震災の影響を受けて、3月15日には、8,605円に急落。その後、震災復興による景気回復の兆しが見られるとの観測から、7月22日に10,132円を付けたものの、ギリシャやイタリアなどヨーロッパの財政危機などによる急激な円高の影響を受けて、9月26日には、今年最安値の8,374円を付けた。昨日(11月17日)の日経平均(終値)も8,479円と低迷を続けている。
その影響をもろに受けているのが地銀の営業マンで、含み損を抱えたままの個人顧客からのクレーム処理に追われる日々で、新規顧客を勧誘するどころではない状況とのこと。今は株価の1日でも早い回復を祈る毎日だという。
肉食系の証券マンと違って、元本保証の預金を販売していた草食系の銀行員が元本保証のない投資信託の販売は無理なのかもしれない。銀行にとって本来優良な大口預金先であった顧客と大きなトラブルになったとの話はよく聞かれ、その勧誘の方法を巡り裁判になったケースもあると言われる。
株式市況の低迷により、今年9月の中間決算では野村証券グループが、283億円、大和証券グループが288億円、みずほ証券が267億円の赤字に転落。一方、いずれも黒字を確保したものの、三菱UFJ証券ホールディングスは去年の同じ時期に比べて最終利益が164億円(▲15%)、SMBC日興証券も107億円(▲39%)とそれぞれ減少している。
ふくおかフィナンシャルグループ(FG)は10月21日、傘下の福岡銀行が同行の持ち分法適用会社である前田証券を、来春をメドに株式交換により完全子会社化することに、前田証券と基本合意したと発表している。
前田証券は、08年3月期に3億1,700万円の当期利益を計上していたが、リーマンショック以降株式市況低迷の影響を受けて、3期連続の赤字(09年3月期~11年3月期)が続いており、今期も大手証券会社同様に大幅な赤字が予想されるため、福岡銀行が完全子会社にする方針を固めたと見られている。
前田証券のみならず、地方銀行が抱える証券会社の多くは赤字に転落すると予想されている。その上支店の数も少なく、銀行員から証券マンに転出した営業マンは、転勤もままならず顧客とのトラブルを抱えて鬱(うつ)病になるケースもあり、今は嵐が通り過ぎるのをじっと耐え忍んでいると言われる。
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