中国山東省青島市郊外のホテルで、日々変わり行く中国を観察している現地滞在のフリーライターがいる。福岡と青島を定期的に行き来している彼に、リアルな中国の今をレポートしてもらった。
11月16日、中国北西部の甘粛省慶陽市正寧県楡林子鎮で、トラックと幼稚園の送迎バスが正面衝突する事故が発生した。死者21名、重軽傷者43名もの犠牲者を出すという悲惨な事故になった。この事故を起こした幼稚園の送迎バスはワゴンタイプで定員は9名。しかし、後部座席は取り除かれ、先生1名と幼児62名がスシ詰め状態で乗っていたという。
この事故を受け、ネット上では宇宙でのドッキング実験を終えた無人宇宙船「神舟8号」の帰還と絡めて、「多くの神舟は発射できるのに1台のスクールバスも買えないのか」と政府を批判する書き込みが相次いだようだ。中国メディアも「高くそびえる地方政府の庁舎や、虚勢を張るための特権公用車を減らし、安全なスクールバスを多く配置するよう要請する」などという異例の人道報道もなされた。
事故から3日目の18日、甘粛省慶陽市共産党委員会宣伝部は、スクールバス購入に公用車予算を充てる方針を発表した。市共産党委員会と市政府は「来年の公用車買い替え計画を中止し、浮いた予算の全額で基準を満たすスクールバスの購入に充てることを決定した」という。
さらに、「甘粛省慶陽市正寧県で16日に起きた重大な交通事故は、現在事後処理が秩序よく進められているという。県共産党委員会と県政府は賠償基準と他の地方の事例を参考に、賠償金・慰問救助金の額について死亡した幼稚園児1人あたり43万6,000元(約530万円)とするとともに、中国人寿保険集団公司に特例措置として保険金の支払いを迅速に進めるよう指示した」と発表したのだ。しかも、「運営認可を取り消された小博士幼稚園の跡地には、正寧県楡林子幼児園が来週正式に開園する」という。
これが一党独裁政治のやり方なのだろうか。事故後の処理は原因を追究するいとまがないほど素早い。
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