九州・山口の地銀（2011年９月）の中間決算から、グループの地銀の預貸金の計数及び収益、また各県内の他行との競争力を取り上げており、今回は山口フィナンシャルシティグループです。
　表は下記を基準としてグループ分けをしています。

（１）福岡FGグループに、歴代頭取を派遣している福岡中央銀行を加える。
（２）西日本シティ銀行グループに、金融支援をした豊和銀行を加える。
（３）山口FGグループに、山口銀行を分割して誕生した北九州銀行スタート時に発表した計数。

１．山口フィナンシャルグループの計数について

１．計数から見える山口FGグループ

（１）山口銀行－預金残高は５兆5,048億円、貸出金残高３兆8,966億円は、地銀21行の中で、福岡、西日本シティ銀行に次ぐ第３位。しかし預金の内訳は一般預金４兆9,914億円に対して
譲渡性預金が5,134億円。総預金５兆5,048億円に占める割合が9.33%と福岡銀行、西日本に比べて非常に高く、同じグループのもみじ銀行も下記表の通り高いことが注目される。

　税引き後利益71億円も福岡、西日本シティ銀行に次ぐ利益を計上しているが、前年同期の86億円から▲15億円大幅に減少している。その主因は資金運用収益が362億円で、前年同期の397億円から35億円減少。その内訳は他行との貸出競争の激化や貸出金利の低下により貸出金利息収入が287億円と前年同期比▲13億円、株式市況の低迷による有価証券の受取利息収入が69億円と前年同期比▲22億円。

（２）もみじ銀行－預金は２兆7,144億円で前年同期の２兆6,892億円に対して252億円（前年同期比0.93%増）となっているものの、譲渡性預金の698億円増によるもので、一般預金は▲446億円(▲1.72%)と減少。11／3月比では預金は▲481億円で、一般預金は▲536億円で、その差額の55億円は譲渡性預金の増加となっており、預金が伸びていないのが注目される。
　 貸出金は１兆8,721億円で前年同期比プラス18億円と微増。しかし11／3月比では▲210億円となっており、預金同様厳しい状況が見受けられる。
　 収益では税引き後利益は40億円で、前年同期の43億円から３億円の減少。その主因は資金運用収益が、203億円と前年同期の219億円に対して▲16億円減少。その内訳は貸出金利息収入が168億1,200万円（前年同期比▲942百万円）と減少したこと、有価証券運用利回りの低下による利息収入減▲389百万円。収益に置いても預貸金と同様に苦戦している。

２．山口FGグループについて

　今後の問題点
（１）山口銀行は今年10月３日北九州銀行を分割新設しており、九州に直接の足がかりはなくなることになる。また山口県内は人口の減少と企業の衰退が著しく、今後の業績伸長は厳しいと予想されている。
（２）北九州銀行は、九州では内容の良い銀行との評価を受けて山口銀行との取引をしていた取引先が、ボリュームの小さい北九州銀行との取引を継続するかどうか。特に福岡市の取引先は九州市に対して一線を画す気風が強い。また北九州市内では、福岡銀行、西日本シティ銀行など他行も迎撃体制を整えている。また新設の北九州銀行はオーバーローンでのスタートであり、単独での収益確保が求められており、かつてのように低金利の貸出競争ができない状況にある。
（３）もみじ銀行は、広島銀行など他行の攻勢を受けて預貸金とも低迷しており、今後安定した収益確保ができるかどうかが課題。経営的には厳しい状況が続くと見られている。
北九州銀行を設立した山口フィナンシャルグループは、西日本を傘下に収めた戦国時代の毛利元就となれるのか　それとも陶晴賢に滅ぼされた大内義隆となるのか　九州への勢力拡大を睨んで設立した北九州銀行の成否がその命運を握っているのかもしれない。

≪　（２）　｜　

不良債権処理額の△は貸倒引当金取り崩しなどによる利益金。
（　）内はグループ順位、不良債権処理額はワースト順位

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