博新建設(株)の内納敏博会長が、26日(土)の午後9時頃に銃撃され、約1時間後に死亡した。同社は北九州市小倉北区に本社事務所を構える型枠工事業者で、内納会長は日建大協((社)日本建設大工工事業協会)副理事長・九州支部長や、福岡建団連((社)福岡県建設専門工事業団体連合会)副会長を務めていた。
北九州は関門海峡を臨む港湾地区で、神戸や横浜などと同様、かつては気性の荒い港湾労働者を多く抱えていた。また、重要航路でもある関門海峡や港湾施設の維持整備のための公共工事が数多く発注されていた。それらに従事する労働者を取りまとめる存在として暴力団が活発に動いていたという経緯があり、現在でもその名残は残っている。同地区で建設業に携わる博新建設は、かつて発注元であるゼネコンの意向を受けて、関係各所との調整役を引き受ける立場にあったとされている。
しかし、時は移り、今や業界では暴力団排除が徹底されるようになった。内納会長も業界のまとめ役を任される社団法人の役員に就いた。業界環境の改善のために行政機関との折衝を行なう身では、" かつてのようなスタンス " は許されなくなった。
同氏は我が身を改めて反社会的勢力から距離を置く姿勢に転じた。それを受けて県警側は同社を「要注意企業」とする見方を改めていた。関係者によると、なにより内納会長自身がそのことを非常に喜んでいたといい、その我が身を正す姿勢と業界に尽くした功績とが相まって、同氏は2011月3日に「旭日双光章」を授与されている。同社の " 過去の企業体質 " はすでに改められていた考えるべきであろう。
他方で、同社が距離を置いたことを面白く思わない勢力がいた。今回の事件は、それが遠因になっているのではとの見方もある。上からは警察、下からは暴力団という板挟みになっていたという。
今回の事件を受けて県内の建設業者からは、福岡県警に対する不信感が広がっている。「警察から言われて(暴力団を)突っぱねているのに、事件が起こってからでないと動いてくれないのでは、協力しようにもできない」(業界関係者)という不安が頭をもたげた格好だ。これが蔓延してしまえば「暴力団排除」の取り組みを瓦解させることになりかねない。
各事業者に残された選択肢はひとつしかない。県警においては本件被疑者の確保は当然のこと、かかる不信感や不安を払拭するような細やかなフォローが望まれるところである。
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