アイランドシティ（人工島）は、1978（昭和53）年の港湾計画では、和白干潟などを潰す陸続きの埋立計画だったのだが、88（平成元）年に現在の島方式に計画を変更された。現在、和白干潟などの海岸部分は「エコパークゾーン」と位置づけられ、自然保護に力を入れている。

　また、福岡市の第三者委員会「アイランドシティ・未来フォーラム」（東京大学大学院教授・出口敦委員長）が作成した提言書にも、「博多湾の豊な自然との共生や創エネ・省エネを推進するスマートコミュニティ」が『未来像』として掲げられている。さらに、『フォーラム委員の意見と思い』として、「ととろの森のような里山、農園、古民家などがあるといい」という意見が記載されている。現に、アニメ映画『となりのトトロ』を監督した宮崎駿監督に協力を要請したという。

　しかし、市の担当者によれば「FAXが送りつけられ、『人工島という自然破壊をするものには協力できない』という旨の回答をいただいた」という。世界的にも有名な宮崎監督に協力を得られなかったのは残念だが、仮に「ととろの森」を人工島につくったところで、同委員会が目指すような「福岡を代表するランドマーク」に成り得るのかといえば、それは難しいかもしれない。

　厳しい財政状況の福岡市。高島市長は先月（11月）15日に開かれた政経セミナーで、福岡市が支出する年間の生活保護費が約700億円にもなることを明かした。さらに、年間100億円ペースで増加する見込みという。そのようななかで、福祉や市民サービスの充実を図るには、経済の活性化が必要不可欠となる。そのためにも、交流人口を増やすのが、短期的な対策として有効だと高島市長はいう。実際、同市長は「経済観光文化局」の設置や、「フィギュアスケートグランプリファイナル2013」の誘致など、交流人口増加に向けて積極的な動きを見せている。

　記者がかつてカリフォルニア州に留学していたとき、日本の友人から「ハリウッドの看板（ハリウッドサイン）は見たか？」とよく聞かれた。ハリウッドサインは、山の中腹に掲げられたただの白い看板で、正直言って見所は特にない。しかし、絵葉書や写真、テレビ番組などでハリウッドの象徴として紹介される機会が多く、記者自身も初めて目にしたときは、少なからず感動したものだ。ただの看板にしろ、「東京ディズニーランド」や「旭山動物園（北海道旭川市）」のようなパークにしろ、人生で一度は訪れたい、そう人々に思わせるようなランドマークが福岡にも必要と思われる。それが、前回の記事にあった「福岡の魅力を体現できるランドマーク的な存在」ということだろう。

　第三者委員会のメンバーを見渡すと、高島市長が、様々な意見が出るように多様な人を選抜したと、胸を張るように、そうそうたる顔ぶれが並んでいる。しかし、これほどのメンバーを集めながら、抜本的な解決方法がなかなか見つからない現状に、「人工島問題」の根の深さがうかがえる。

　人工島が、市民の憩いの場所になり、さらに経済活性化に繋がるのか。それとも、投入した公的資金の不足分が市民の負担として、重くのしかかるのか。いま、岐路に立つ人工島問題の行く末に、市民一人ひとりが強い関心を持つことが求められている。

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