12日、ドイツ化学大手ワッカー・ケミーグループ(ミュンヘン市)の半導体基板メーカーの日本法人「シルトロニック・ジャパン」(本社:東京都中央区、松村篤樹社長)は、国内唯一の生産拠点である山口県光市島田の光工場を、2012年5月をメドに閉鎖すると発表した。光工場の生産分はシンガポール工場とアメリカ・ポートランド工場(オレゴン州)に移管する。
光工場では民生用として幅広く使われる200ミリのシリコンウエハーを中心に生産しているが、300ミリウエハーへ需要が移行しているため、今年の夏以降需要減が顕著となり、稼働率は50%以下に落ち込んでいると言われる。来年以降も200ミリの需要回復の見込みがないと判断し、光工場の閉鎖を決めた。
同社によると、光工場では現在、513人が正社員として働いている。平均年齢は30歳代後半で、閉鎖にともない全社員が解雇されることになる。
500人以上の大量解雇は山口県内では過去に例がなく、また300人を超える社員が光市に居住していることから、同市の市川煕市長は「驚きと戸惑いを感じる」と突然の知らせにショックを隠せないでいる。
山口県は同工場の閉鎖決定を受け、雇用対策本部(本部長・二井関成知事)内に、12日付で対策検討チームを設置。500人を超える雇用を同市で吸収することは困難と見られ、市川市長は周辺の会社に雇用を呼び掛けるとしているが、山口県内の雇用状況も厳しく、解雇される従業員やその家族にとって先行きは暗い。
同社の旧社名はニッテツ電子で新日本製鉄の子会社として1985年に設立。93年から200ミリのシリコンウエハーを生産し、生産能力は月22万~23万枚。2003年に新日鉄は同事業から撤退し、ワッカーグループに株式を売却していた。
東芝も半導体事業の再編計画を発表。北九州工場(北九州市小倉北区)など国内3工場を、来年度上半期中に閉鎖する。大分工場も生産を一部縮小し、海外への移管を加速させる。北九州の従業員約530人と、大分の縮小にともなう約500人の計1,000人以上は、国内の他の生産拠点に配置転換するとしている。
急激な円高の進行により半導体事業のみならず、輸出産業全体が大きな打撃を受けている。採算悪化により次々と国内工場の閉鎖と海外工場への移管が続くようなことになれば、雇用を吸収することができない地域経済に与える影響は深刻である。
※記事へのご意見はこちら