バブル時の採用は、バランスがとれていた。たとえば、ある企業で、100人採用したいとすると、Aクラス30名、Bクラス40名、Cクラス30名という風に棲み分けができていた。実は、組織的にも、この形は一番バランスが良く堅固でもあるのだ。入社時、Cクラスのものが最後まで、Cクラスでなければならない理由はない。プロ野球と同じだ。入社時は、大学などの偏差値、縁故が優先されるが、入社後は実力主義だ。「イチロー」が出てくる可能性だって大いにありえる。
ところが、バブルの時、100名採用した企業の現在の採用数は10名だ。企業は全員Aクラスを欲しがる。縁故をまったくは無視できないので、枠は偏差値と縁故で一杯どころか、それでも対応できない。それ以外の候補者が入る余地などは最初からない。これが一流企業であれば納得がいく。しかし二流、三流企業もすべてこの図式だ。実は、二流、三流企業ほどAクラスを欲しがる傾向がある。今が買い手市場と知っているからだ。
このはっきりした現実を見せずに、親が子供と一緒に就職活動することをあおってどうするのだ。その結果、以下のような、信じられないバカな現象がおきている。
1.親が大学のキャリアセンターを頻繁に訪問。面接指導予約が殺到。
2.大学は、保護者向けに「ガイドブック」を発行、全国で保護者対象に講演会を開催。入学前から就活指導をする大学も出現している。
3.会社説明会に両親が出席。まるで「モンスターペアレント」の会社版だ。
本人が成績優秀であっても、両親が会社説明会について来た学生を採用する企業があるのだろうか。学生が自立していないことを公然と面接官に見せているのだ。そのうち、母親と一緒に同伴通勤するのだろうか。
筆者は大学時代、進学塾で入塾・父兄面接をした経験がある。やる気のない子供を無理矢理連れて来た、やる気満々の母親がいた。思わず、「おかあさんが入塾しませんか。息子さんは、やる気がなさそうなので・・・」と言ってしまった。その時の記憶が今よみがえった。
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