「学歴不問は嘘!増大する企業への不信感」というのは、マスメディアが大好きな見出しだ。本当にそう思っている記者がいたら会ってみたい。勉強不足もはなはだしいからだ。
オーナー社長の息子や娘でない限り、偏差値40や中学生レベルの書き取りや計算がおぼつかない人間を入社させる奇特な人事部長は存在しない。人事部長はサラリーマンだ。自分の身が恐くてそんなことができるはずはない。予言者や占い師でもない。数回の面接で、現在のデータ(大学の偏差値、成績など)とまったく違う結論を出す自信、勇気はない。責任もとれない。
「卒業後、すぐに一流・有名会社への入社が唯一・最善の道」に焦点を合わせるならば、この問題は永遠に解決しない。そして、20年前、30年前と違って、もはやそれは真実ではないのだ。こだわるほうがおかしい。
入社する会社と本人の全人格や将来性はイコールではない。絶えずどこが足りないかを認識し、冷静に補えばよいのだ。10年後には簡単にキャッチアップできることはもちろん、抜き去ることだって充分可能だ。今までサボった分、これから、死ぬような努力が必要になるというだけのことだ。
問題は、このマスメディアの誤った誘導が、その機会をなくしてしまうことにある。学歴・偏差値重視で入社した学生も、勉強を怠り、コミュニケーション能力が欠けていれば、厳しい現実が待っている。入社後は実力主義だ。
筆者は早い時期に自分の「キャリアマップ」(人生におけるキャリアパスを図式化したもの)を書くことを提唱している1人だ。「キャリアショック」が起こった時、キャリアマップがあれば、ソフトランディングできるからだ。
「キャリアショック」とは、自分の描いてきた将来像が、予期しない環境や状況の変化によって崩壊することを言う。そして変化の激しい時代を生きるビジネスマンは誰でもそのリスクは避けられない。
今年、厚生労働省は従来の4大疾病(がん、脳卒中、心臓病、糖尿病)に、新たに精神疾患(うつ病など)を加えて「5大疾病」とする方針を決めた。うつ病には、会社・団体内における「キャリアショック」が大きな影響を与えている。「心の筋肉」を絶えず強化しておくことは、とても大事なのだ。
「親と子の就活」は、この心の筋肉を鍛錬する絶好の機会を奪うものだ。
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