新たな年は千葉県沖マグニチュード7の地震で始まった。ロシアの地震予知学会の発表によれば、千島カムチャッカ海域では巨大な地震の予兆が観測されているとのこと。他にも世界各地で異常気象や自然災害の危険性が指摘されている。その意味では、今年は「想定外の大災害」が発生した昨年を上回るような自然災害も発生しかねない。日頃からの防災訓練や非常食などの備えは欠かせないだろう。
ところで、自然界の地殻変動と軌を一にするかのように、人間界でも政治、経済の分野を問わず、あちこちで大きな変化が起こりそうな雲行きだ。2012年は「選挙の年」。台湾を皮切りに、ロシア、フランス、中国、アメリカ、韓国でも指導者の交代がありうる。もちろん、我が国も例外ではない。
そんな激変の年の幕明き早々から、海外メディアを中心として中国の動きが大きく報道されている。なかでもインド洋のセーシェルに中国海軍が初の海外基地を確保することになったというニュースは大きな扱いであった。中国にとって、インド洋は中東から原油を輸入する際の重要な補給路となっている。今や日本以上に中東原油に依存する中国。中国が輸入する海外原油の80%がインド洋を経由する。まさに生命線といえよう。
加えて、インド洋での影響力拡大を争うインドへのけん制を一段と強める狙いも秘められている模様。人口でも経済、軍事面でも、また当然のことながらエネルギー消費の側面でもライバル関係にあるインドと中国。2050年までに世界のエネルギー消費の半分以上を飲み込むといわれる巨大な象と龍の戦いは周囲に大きな波風をもたらしそうだ。近年、中国軍がセーシェルに限らず、パキスタンやイエメンなどの海外に軍事拠点を建設するのではないかと憶測が絶えなかった。もっとも、それは中国の安全保障の専門家の間では既定路線であったのだが。
すでに数年前から「中国が海外軍事基地を確保してはならない理由は存在しない。海賊やテロ対策ではなく、中国包囲網を画策する国々に対抗するための自衛手段に過ぎない」との議論が台頭しており、その意味では、2012年は中国が本格的に海外に軍事拠点を設ける年になる可能性が高い。
急速な経済成長をとげる中国にとって、石油、天然ガスなど、エネルギー資源の確保は緊急課題である。かつては資源の輸出国であった中国だが、今や世界最大級の資源輸入国になった。たとえば、欧米諸国が経済制裁を科そうとしているイランから原油を最も多く輸入している国は中国に他ならない。
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<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務政務官に就任。震災復興に尽力している。
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